ボノニア国へ
轟音と共に白と緑を基調とした2機の機動兵器がこちらに銃口を向けながら迫ってくる。
「そこの機動兵器、武装を解除してハッチを開けろ!」
スピーカーから男の声が聞こえる。
俺はその声の言う通りに、重たい鉄のハッチを開ける。
「山賊に襲われたんです!敵意はありません!」
声を張り上げて伝える。山賊機体のハッチが開くことはなかった。そもそも操縦席自体が存在しないのだが。
「それは災難だったな。念の為そのまま手を上にあげて降りてこい。手は貸してやる。」
そう言うと1機の手がこちらのハッチの手前まで伸びてくる。
そのままロゼと二人で乗り移る。
「まさかそんな物騒なものの中から女連れとはな!優しくエスコートしますぜ!」
そう言われ優しく地面に降ろされる。その後声がしていた機体から1人の男が銃を携えて降りてくる。ヘルメットを被っているため顔はよく見えないが、声からするに中年だろう。
「おっと、そこから動くなよ。俺も出来れば撃ちたくない。」
所持品検査を受け、俺たちが凶器を持っていないことが確認しながら何があったのか事情を聞かれる。
「それは災難だったな。こいつらは最近この辺りで略奪を働いてて困ってたんだ。いつも逃げ足が早くて捕まえられなかったんだが、お前のおかげで助かったぜ。俺はイーサン。よろしくな。」
「陽斗です。こっちはロゼ」
「しかし今日初めて機動兵器を動かしたってマジか?それで山賊の2機をのしちまうなんて聞いたことないぜ。お前才能あるよ。」
イーサンはタバコをくわえながら上機嫌に話している。無精髭が生えた金髪の男だった。
「無我夢中で…」
あえて俺が魔力が0ということは伏せておいた。なぜ動かせたかは未だに分からない。意識を取り戻してから動かそうと思ってもダメだった。
「よし、お前たちはOKだ。おーい!そっちはどうだ?」
「ダメです。どちらもコクピットは、跡形もなく生存者はいません。」
もう一機から若い声が聞こえる。
「そうか、それじゃとりあえず本部に回収を依頼しとけ。街まであと少しだがお前たちのは動かせるか?あ、武器は持つなよ。」
「分かりません。やってみます。」
傭兵の遺品、いや遺機体か。を見るとパンチした片腕はめちゃくちゃになっている。
コックピットまでロゼと登ると起動しようとする。
が、反応がない。やはり俺には動かせないのか…あの時どうして動いたんだろう…記憶を必死に思い出す。
そうだ、ロゼが俺の手の上から手を重ねた瞬間に動いたのだ。
「ロゼ!ちょっと俺の手の上に手を重ねてくれないか?」
「わかった。」
そうしてロゼが手をかざした瞬間、
「ピシューン」
やはり起動した。起動の鍵はロゼだったのだ。ロゼの魔力を使ったということだろうか?この世界の人間は魔力が少ないという話だったが…
「おい!動くのかどうなんだ?」
再びスピーカーからイーサンの声が聞こえる。
「なんとか動きます!」
「よし、俺に着いてこい!ラナ、お前はこいつらの後ろから警戒して着いてこいよ。」
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そこからは早かった。元々歩く速度に合わせて進んでいたため時間はかかったが、機動兵器だけであれば遥かに早く動くことができる。
これを魔力で運用できるのだから確かに色々発展するだろう。まぁ運転できない人が大半なのだが…
あの二人は地球人なのだろうか?
そんなことを考えていたら前から声が聞こえる。
「着いたぞ!いいか、ここでお前たちは降りろ。その後は案内に従ってうちのお偉いさんに対して報告してもらうぞ。」
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機動兵器から降りると武装した兵士達に囲まれる。もう一度身体検査を受けた後、着いてくるように促される。
ボノニア国と言っていたか、辺りを見渡すと2階建てくらいの建物が綺麗に並んでいる。日本でいうと京都の住宅街を更に地味にしたといった感じだろうか。
案内されるがまま進むと、前方に周りの建物と比べると一際高い建物が現れる。
「入れ。」
命令されるがまま建物の中に入ると、そこには軍服を着た一見して分かる偉そうな中年がいた。
「報告は大まかに受けているが、今一度何があったのか聞かせて欲しい。」
俺はイーサンにした説明をもう1回する。もちろん地球人であることなどは端折ってだ。
「ふうむ…お主が機動兵器を動かしたのか?小型とはいえにわかに信じ難いが…」
ブツブツと男は呟いている。
「まあよい。いいと言うまでは、こちらが用意する宿舎に泊まるように。あの機動兵器はお前たちのか?」
「いえ、亡くなった護衛のおじさんのです。」
「そうか、返却するかも含めて追って連絡する。」
そう言われその場から追い出される。
兵士のひとりに宿舎に案内される。どうやら普通の宿屋のようだが、監視が1名付くらしい。
「あの、俺たち金がないのですが…」
「食事と生活に必要なものはこちらから定期する。無断の外出は禁止する。」
かなりお堅い人のようだ…
シャワーを浴び、ようやくフカフカのベッドに横たわった瞬間、肉体的だけではなく精神的な疲れからか意識を失ってしまい、扉を叩く音で目が覚める。
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「おい!お前ら!早く開けろよ!」
この声はイーサンか。なんだろう。
そう思いつつドアを開けるとそこには相変わらずタバコをくわえたイーサンの姿が。
「ちょっと邪魔するぜ〜積もる話もあるだろうからな」
そういいながらイーサンが我が物顔で部屋に入ってくる。
イーサンからの説明によると、俺たちが山賊を討伐したということは残された痕跡から認められたこと。また、正当防衛として罪には問われないようだ。そればかりか山賊達はこの国の指名手配のお尋ね者だったようで、報奨金が貰えるかもしれないらしい。
「お前たち羨ましいな〜結構な金額だぜ?パーッと使っちまってもよしだな!そういう店に興味あるなら案内するぜ!」
イーサンが茶目っ気のある顔でウィンクする。
(何歳だと思ってるんだよ…)
説明を終えると、イーサンは明日再度出頭するように言い残し去っていった。
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翌日、初日に立ち入った場所に再度案内されイーサンから聞いたことを再度聞かされる。
その場には軍服ではないが高価そうな服装の屈強な老人が同席していた。
「あの山賊達には手を焼いていたので助かった。報奨として50万を支給する。」
そう言われ、金を手渡される。この国では宿には1日2千もかからず泊まれるようなので、大体貨幣価値は10倍すると日本円と同じくらいだろうか。
「ありがとうございます。」
「して、お前たちに聞かねばならぬ事があってな、これからどうするのだ?お前たちが乗っていたものの処遇も決めねばならぬ。あの機動兵器の持ち主はもう亡くなったと聞いている。ギルドに機体を登録すれば、そのままお前たちが保持してても構わん。ワシらは常に操縦士は歓迎するぞ。」
そう老人はいう。機動兵器を所持するためにはギルドなる組織に登録が必要のようだ。
「ありがとうございます。少し考えさせてください。」
その場はそう言って宿に戻った。これからどうしようか、そういえば昨日イーサンが連絡先を置いて行ったな。良さそうな人なので連絡してみよう。
早速連絡すると
「お?早速行きたいのか?今からそっちに行く特別に奢りだ!」
前のめりに答えて向かってくる。この人が行きたいだけじゃないか?
部屋に来たイーサンに目的が違うことを告げると露骨に残念そうな顔をしている。
「で?なんで俺を呼んだんだ?」
不機嫌そうな声だ。
「俺たちこれからどうすればいいのかと思って…頼れる人もいないし。」
「はっはっは!そうだな、操縦士ってのは憧れの職業で稼げるんだ。あの機体を貰えるってんなら小型だが何にでも使える。俺なら有難く貰うけどな。ギルドには操縦士向けの仕事はいくらでもある。お前たち仕事もないんだろ?」
確かにそうだ。報奨金を貰ったとはいえ生きていかねばならない。
その足でギルドに向かうと昨日会ったギルド長が奥から出てきて声をかける。
「よく来たね。待っていたよ。」
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そうして俺たちはあの機体を受け取った。が、戦いの痕跡が色濃く残っているので、このままでは使うことはできない。
ギルドで修理もしてくれるということなので、依頼することにした。
が、誤算だったのは修理費が報奨金の金額を上回るということだ。ギルド長は貸付の形でいいと言うが…最初からそのつもりだったなこのジジイ。
そうしてボノニアでの債務者生活が突如始まりを告げたのだった。




