初めての戦闘
「う、動くッ!!」
理由は分からない。けどこの状況でやることはなんとか生き残ることしかない。
足元のペダルのうち片方を踏み込むと、機体が前進する。今距離が近付いてはダメだ。反対のペダルを踏み込むと案の定後退する。
両手の操縦桿が両腕と連動しているようだ。
(くっ…敵が迫ってくる…)
敵の機動兵器が棍棒を振り上げる。
何とかしなければ。斧で受け止めようとしたその瞬間、辞めるべきだと第六感が告げる。
あの質量をこの細い斧で受け止められるわけがない。
咄嗟に斧に角度を付け、振り下ろされる棍棒の力を受け止めずに受け流す。
「ガギン」
とんでもない轟音がする。鼓膜が破れそうだ。
なんとか棍棒を捌いた瞬間、咄嗟に体に染み付いた動きが出た。棍棒を受け流した反動を殺す事なく後方に半円を描くように斧を回し敵機に向けて振り下ろす。
「なn…!!」
山賊パイロットがその先を発することはなかった。
「バキャ」
斧だと言っても切断する訳ではなく鈍器のように山賊機動兵器の頭付近にめり込む。何度となく幼少期に繰り返した相手の攻撃を受け流して面だ。
俺は人生で初めて人を殺めた。
しかし感傷に浸っている暇はない。そうだ、まだ終わっていない。山賊機体はまだもう一機いるのだ。
敵機の方向を向こうとするが、何かが引っかかって動かない。視線の先には斧が敵機にめり込んでいた。
「クソ!!動かない!」
咄嗟に斧を手放し既に命途絶えた山賊機体を盾にするように回り込み距離をとる。
どうする…相手は棍棒を持っておりこちらは丸腰、しかも細かい操縦方法は分からない。
絶体絶命というやつか。
その瞬間世界がスローモーションのように見える。
(こ、これは…あの時の…)
そうだ。この感覚はかつて剣道の全国大会でも同じ感覚に陥ったことがある。咄嗟に自分のすべきことが分かる。
「うわぁぁぁぁぁ!!」
全力でペダルを踏み込むと同時に、拳をそのまま前に突き出す。
重々しい機械音と共に、片腕が操縦席目掛けてめり込む。同時に全身をものすごい衝撃が包み込み操縦席の壁に向かって身体が投げ出される。
操縦席を狙った敵の棍棒は突進した事により本来操縦席があるはずだった虚空に向かって振り下ろされていた…
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どれくらい経っただろうか。ハッと目が覚めると頭に激痛が走る。
(ロゼは?!)
辺りを見渡すとロゼはシートにもたれて眠っていた。よかった、息はある。
外を見渡すと夜が明けてきており、光が彼方から差してきている。
どうやら山賊達は立ち去ったらしい。山賊機体は2機とも捨てられたままになっている。
(おぇっ…)
今になってこの手で人を殺めたということを実感する。
(でも、こうするしか無かったんだ…仕方がないじゃないか…)
「ロゼ!ロゼ!」
「んん…」
呼びかけるとロゼが目を覚ます。よかった…
「大丈夫だったか?ごめんな怖い思いさせて。」
「ううん。いいの。ありがとう。」
それにしても何故魔力量0の俺が機動兵器を動かせたのだろうか。もし動かせなかったら確実に大地の養分になっていたのは俺たちだった。
そう考えていた時に地響きが近付いてくる。
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「あそこに何か見えます!機動兵器じゃないですか?」
「こんな所でか?そんな報告は受けていないな。念の為警戒して当たれ。」
「は、はいっ…」
「はっはっは。安心しろ、見る限りあれは小型の機動兵器だ。ひよっこのお前でも大丈夫だよ。」
先輩らしき操縦士がまだあどけなさが残る少年操縦士に声をかける。
彼らはボノニア国所属の操縦士たちであり、付近の哨戒任務に出ている最中に、遠くで3機の機影を確認したのだった。
「しっかし、3機とも動かない。どうなってんのかねぇ…争った形跡はあるが…みんなお陀仏しちゃったのかねぇ」
そう呟きながら近付いて行った彼らは、その数分後、1機の機体の中に男女2人の生存者を確認し、保護したのだった。その他に生存者は0であった。
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機動兵器コレクション
ガリソン商業連合、ボノニア国 機動兵器
トレッカーⅡ
全長:15.2m
本体重量:69.5t
ガリソン商業連合にて軍に一般的な配備されている機動兵器。旧式のトレッカーを踏襲し新たな量産機を制作するとのコンセプトのもと、装甲と機動力を強化に主眼を置かれ制作されたフラッグシップ機。
ボノニア国の所属であることがわかるように白と緑でカラーリングされている。
哨戒任務中に陽斗とロゼを発見する。
その見た目から操縦には高い魔力量が必要と見えがちだが、技術の発展により魔力効率が格段に向上しており、魔力量が多い恵まれたエアデ人であれば操縦が可能である。




