追放〜そして新たな出会い
それから暫く俺たちは交易国の敷地内で過ごした。露骨な魔力量に応じた待遇の違いを感じながら。
この間、俺たちはこの世界について学んだ。
この世界には大きく分けて9の大国家があり、それにサンデー交易国を加えた10カ国で成り立っているようだ。そして9の大国家は当然覇権を求めて日々争いを続けているらしい…
そこで使われるのも当然、機動兵器なので魔力量が多い優秀な人材は喉から手が出るほど欲しいということだ。
また、その他にも小規模ながら国家らしきものはあるようだが、日々興きては滅んでを繰り返しており、そもそも地理的にもなんの価値も無い土地であるため9大国は管理すらしていないらしい。
また、魔力の扱い方も学んだ。正確には学んだらしい、か。
俺は魔力量が0だから扱えないから当然魔力に関する授業は受けておらず、蓮から聞いたことになる。
魔力といってもよくあるファンタジーのように魔法を使えたり炎を出せたりする訳ではなく、あくまで自分自身がバッテリーになったようなものらしい。魔力量が多い人はより多くの充電が可能でその分大容量の機器を動かすことができるようになる。
ただ、電気のようにコンセントがある訳ではないので、魔力の扱いとしては触れたものにエネルギーを流す感覚を身に付けることが大事らしい。その感覚さえ掴めば、対象に触れるだけで物を動かす事ができるようになるようだ。なんと便利な。
また、魔力は当然使えば減っていくが、食事と休息により自然に回復するようだ。召喚された初日に豪華な食事と豪華な寝床が全員に提供されていたことにようやく合点がいった。
また、基本的に魔力量は素質によるところが大きく、成長により多少増加することもあるようだが、大きくは変化せず、そして魔力がない人間は(俺を除いて)存在しないとのこと。
ここまで説明を聞いた時どっと疲れが出てきた。
つまり魔力を一切持たない俺は、地球でいえば電気など一切なしで暮らさなければならないということだ。もちろんこの世界に普及している電化製品の類いは一切使えない。
もちろん魔力を蓄えた蓄電池のようなものはあるようだが、この国の人はいつでも自分の魔力を使って充電することができることから、需要がそもそも無いことに加え、当然使い捨てではないから高い。
これを毎回買っててはお金がいくらあっても足りないだろうな…
また、日々クラスメイトの関係がギクシャクしていくように感じる。魔力量が多いものはそれだけ優遇され、無意識にかは分からないが優生思想が身についていく。
1番露骨なのはやはり羽鳥と藤村だろう。藤村は圧倒的な魔力量を背景に高待遇を受け、当然羽鳥はそれに歯向かうことは出来ない。それどころか立場は完全に逆転してしまい藤村に群れるクラスメイトまでいる始末だ。
そんな羽鳥の鬱憤の晴らし先はどこかというと、当然自分より魔力量の低い者になる。もちろん0の俺はその対象だ。
蓮がいる時は庇ってくれるが、一人の時はそうはいかない。
そんな毎日を送る中で、ついにその時はやってきた。俺たちの進路選択の時だ。
進路選択といってももちろん自由に選べる訳もなく、俺たちは2パターンで進む先が決まるらしい。
1つはオークション形式で各国に販売される方法。
またもう1つは内々の取引。いわゆる庭先取引と呼ばれる形態で、オークションを介さずサンデー交易国が内々に交渉して相手国に輸出する方法。
どうやらこの方法を利用してサンデー交易国は、他の9大国家から富と権力から果ては人質まで独占しているようだ。各国は唯一異界からの召喚術を有しているサンデー交易国と当然仲良くならねばならず、人質や権力、はたまた他国の動向まで気にして召喚術を武力で独占する事などは出来ないということだ。
世界征服することだって可能だろうが、そうしない理由はあえて競わせた方が結局自分たちに利があるからに尽きるだろう。
広間に集められたクラスメイト達が一人一人呼ばれて行く。
「天城殿、桐生殿、水瀬殿、カエサリア帝国…」
どうせ俺は呼ばれない。
みんなどんどん順に名前が呼ばれていく。
蓮はカルナック砂漠連邦に行くようだ。広大な国土と砂漠がある国らしい。
もう1人、命の恩人の梨桜はアルビオン王国のようだ。
そうして俺を除く全員の名前が呼ばれた。
出発はすぐとの事で、みんなが次々に旅立っていく。
「俺が居なくても泣くなよ。元気でな。」
蓮と別れの言葉を交わす。俺は移動の手段も無いし、蓮の行くカルナック砂漠連邦は距離的に遠いので、恐らくこれが会える最後のチャンスかもしれない。
「お前こそ。絶対に死ぬなよ。」
そう伝えると涙ぐむ蓮は馬車の中に消えていった。
「金田、お前にはこれをやる。九条殿との約束に従いどこにでも行け。九条殿、これで問題はあるまいな?」
ユスダルが俺と梨桜に向かって問いかける。
渡された袋の中には見た事がない額の現金が入っていた。もちろん俺では現金を降ろすことすらできないためだ。とはいえこれで本当に一生暮らせるのだろうか。
「陽斗…あの…」
「ありがとう、これで何とか生きていける。迷惑かけっぱなしで悪かった…」
梨桜の発言を制するように一方的に言い残し、俺は城を後にするのだった。
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そうして、ひとまず俺は街中を探索する。この国は非常に豊かな国と聞いていたがある意味本当である意味嘘だ。確かに金持ち達は豊かである一方で、貧富の格差は広がり、街の外れはスラムになっている。今そんなところを歩いては何があるか分からない。
そうして繁華街に戻り、宿を取ることにした。
長期的に見れば節約する方がいいだろうから、道行く人に話を聞き、旅人が泊まるような無難な宿に宿泊する事にした。
これからどうしようか…
そう考えているうちに気付いたら眠っていた。きっとストレスもあり疲れたのだろう。さて、食事を食べに行くか、そう思った瞬間に鍵をかけていたはずなのに扉が開く。
外を見ると宿の主人の後ろに武装した兵士達が複数人立っていた。やられた…役たたずの俺にこの国のケチなあいつらが少しのお金もくれるはずがなかった… 宿の主人も俺を売ったのか…
そうして無一文になった俺は、外に投げ捨てられた。これからどうやって暮らそう。
あてもなく彷徨ううちに気が付いたらスラムに迷い込んでいた。あまりに絶望していたから気が付かなかった。
とはいえ無一文の俺を泊めてくれるところなんてどこにもないから同じことか。そう考えていた時、俺の周りを、汚い身なりの男達が取り囲む。
「金を…食料でもいい…置いてけ…」
「何も持っていない。調べてもらっても構わない。」
「うるせぇ、嘘をつくな!」
そう言いながら男が力なく掴みかかってくる。
必死の思いをして男たちの手を振りほどき、その場から這うようにして脱出する。死に物狂いでどこまで逃げてきただろう。気が付いたら辺りに建物の影も少なくなっていた。
(なんとか今日雨風をしのげるところはないかな…)
そう思い辺りを見渡すと、少し先に今にも崩れ落ちそうなくらいボロボロな建物を見付ける。当然明かりは付いていない。
無人の方がありがたい。
今日はあそこで夜を明かそう。
家に入って息を落ち着かせると、色々なことを考えてしまう。無一文でこの世界でどうやって暮らそうか。
結局その夜は一睡も出来なかった。そして外が明るくなってきた頃、ギィィと重たい音をして扉が開いた。
「そこにいるの。だれ。」
声の方を向くと、昇ってきた朝日を背に銀色に輝く長髪をたなびかせる女性がそこに立っていた…




