侵攻作戦の裏側
────ボノニア国、評決の後
11月8日、軍務大臣室────
「あの狐め、反対票を投じおって何を考えているのか。」
軍務大臣が総参謀に問いかける。
「さようですな…軍部の力をぬるま湯組にアピールする良い機会ですのに」
「そうだ!ことある事に出費がどうの言ってきおって、ここぞという時に必要になるに決まっておるのだ。黙らせるためにも手を打っておきたいが、何か手はないか?」
「この作戦をラッセル中将が成功させた場合、彼の地位は確固たるものとなるでしょう。その場合堅物の彼のことです、大臣にとっても御し難いのではないかと愚行します。」
「…続けろ」
「彼1人の手柄にしなければ良いのです。理由を付けて我々の息のかかった者を合わせて責任者とすれば、成功の暁には大臣の力を誇示すると共に、彼の影響力も低下できます。そして成功をもってすれば財務大臣を黙らせるのは容易かと。」
「なるほど。貴官は相変わらず知恵が回るの。」
「恐縮です。それでは進めます。」
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この世界では機動兵器の数と性能が戦闘の勝敗を左右すると考えられており、またこれは真実である。
魔力を効率よく攻撃に利用する媒体として、機動兵器はあまりにも適しているのである。
ボノニア国とスフェン国の戦力は、少なく見積っても1:9はあるだろう、というのがボノニア国の司令部の見立てである。中小都市ボノニアと有数の経済都市スフェン国では当然の戦力差といえる。
そんな中でも、スフェン国の侵攻準備が進められてるのはガリソン商業連合(特にスフェン国周辺の中小国家郡)からの援軍が見込まれているからである。
「援軍の状況はどうなっている?」
スフェン国への侵攻の責任者であるラッセル中将が副官に尋ねる。先日まで少将であったが、侵攻作戦に伴い昇進したようである。
「それが、周辺各国からの援軍は到着しておりますが、連合本部からの増援がまだ…」
「なんだと?そこが我々の生命線なのだぞ。多少無理を言ってもいい急がせるんだ。」
「はっ。承知しました…」
「はぁ…どうしてこうも危機感がないのだ…」
ラッセル中将は頭を悩ませていた。そんな中、更に頭を悩ませる事項が湧いてくるとはこの時はまだ中将は知らなかった。。。
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この度の侵攻作戦は国の命運をかけた一大事であり、指揮官であるラッセル中将の負担を減らす必要がある
よって侵攻副司令官兼ラッセル中将の参謀長としてヒス准将を任命する
これが翌日軍務大臣から発せられた告示であった。
「何を馬鹿なことを言っているんだ?権力争いをしている暇はないだろう?!」
ラッセル中将が憤慨して副官に声を荒らげる。
「ええ、まさか軍務大臣の一派がこのような手に出るとは…」
現在軍部で勢力を誇っているのは軍務大臣を筆頭とする軍務大臣派である。背広組とも揶揄される者達で、士官学校を優秀な成績で卒業し、戦功よりもゴマすりで昇進をしていると影では揶揄されている。
反対にラッセル中将は現場からの叩き上げであり、背広組には迎合していない。一般兵へのウケは当然ラッセル中将の方が良いが、指揮官層は背広組の方が圧倒的に多いのだ。
「さっそくヒス准将が面会を求めてきております…」
「またくだらないことを言ってくるに決まっておる。無視しろ」
「閣下…そうはいきませぬ…」
「はぁ…5分だけだ。忙しいと伝えろ。」
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「大層お忙しいところ時間を頂戴して恐縮です。」
「ああ、貴官の言うとおり忙しいのだ。要件があれば手短に頼みたいのだが」
「私が副司令官に就任したからには中将の負担もきっと減ることでしょう。して、本題ですが、司令部の任命権をいただきたい。もちろん全てとは言いません。」
「なに?またいつものお仲間で固めるのかね?宴会でもするつもりか?」
中将は冷たくあしらい、反面准将の顔が真っ赤に沸騰していく。
「有能な戦友を侮辱するのはやめていただきたい!」
「はぁ…がなりたてるな。嫌だと言っても泣きついてやるんだろう?貴官の担当する部隊であれば好きにしろ。ただ、部隊編成については司令官である私の一存で追って決める。これは譲れん。分かったら下がれ」
「くっ…」
まだ言い足りない事が山ほどありそうだがヒス准将は下を向きながら下がっていく。
「あいつの顔を見たか?ん?ヒステリーとはまさにあの事を言うのだな。」
「人が悪いですな中将も…」
苦笑いしかできない副官であった。
前回更新から時間が空いてしまい申し訳ございません!
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