決戦、そして
城門が開きいざ出撃するとなって口の中がカラカラな事に気が付く。今まで戦闘する事は何回かあったが、これから戦争に行き、命のやり取りをしなければならないと分かりながら出撃するのはまた独特の緊張感がある。
「戦争は大人の仕事なのにな…巻き込んですまない」
イーサンから通信が入る。まだ全快では無いが出撃するようだ。
「ただ、くたばるわけにはいかないだろう。俺もお前たちも。」
そうだ。俺はこの世界で何もかも失ったが、唯一残ったロゼだけは守らなければいけないんだ…
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「僚機シグナルロスト!ロスト地点を座標で送る。そのまま現着し生存者の救助に当たれ。十分に警戒されたし。」
通信が入る。
指定されたポイントに向かうと地面に倒れ伏すボノニア国所属の鉄塊がそこにはあった。
間に合わなかった…
機体には貫かれたような跡がいくつか空いているある。この跡、あいつに違いない。
「付近を警戒しろ。生存者は…本部に伝えろ…」
イーサンから指示が飛ぶ。
どうやら回収部隊が来るようで、任務が生存者救助から回収部隊の護衛に切り替わった。
このポイントはボノニア国の近辺、つまりガリソン商業連合の勢力下であり、他国の機体が発覚されずにこんな所まで近付けるはずがない。
それなのになぜ複数も被害が起きているのか。
(…!!)
突如背筋に震えが走る。殺気だ。
「警戒して!」
咄嗟に声が出る。
「そんなこと言っても周りには…」
そこまで言ったところで僚機の会話は、人生は終わった。突如姿を現したあの機体にコクピットを貫かれる。
「どういうことだ?!なんもねぇところから出てきたぞ?!」
イーサンが咄嗟に後退し武器を構えながら叫ぶ。確かにそうだ、何も無いように見えた空間から突如姿が見えて攻撃をしてきたのだ。迷彩機能が付いているのだろうか。だが、今はそんなことを深く考える余裕が無い。
「ロゼ!捕まってて!ちょっと激しく動く!」
イーサンの機体に襲いかかろうとする敵機に割って入るようにして剣を出す。
ガキン
金属の衝突音が響く。
黒い敵機は振り向くと同時に爪を突き出してくるので、横に回避しつつイーサンとの間に割り込み剣と爪の攻防を繰り広げる。
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「な、なんだこいつらは…」
イーサンが呟く。当初は加勢に入ろうかと思ったが、あまりにも目まぐるしく切り結ばれているため横から入る余地がないのだ。
ハルトと黒い敵機の間では激しく鋭い攻撃の交換がなされており、一見互角に見えるが、明らかに機体のスペックは黒い敵機が上回っており、技術でハルトがカバーしている。
しかし、よく見ると次第に黒い敵機の方が機体に傷が増えてきているように見えた。
「くっ。そのままだ…」
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もうどれくらい切り結んでいただろうか。ものすごく長い時間に感じるが、時間としては僅かなのかもしれない。
「ふぅ…」
俺は深いため息を吐く。
前回は機体がパワー不足で動きも鈍かった分苦戦したが、今回は相手の動きについていけている。そして爪の軌道に段々慣れてきたのか攻撃がいつどこに繰り出されるのか次第に見えてきていた。
「ここっ!」
爪を受け流しつつ反撃を加えていく。まだ中枢部のガードは硬いが、手足の方から次第に攻撃に手応えを感じてきている。
突如敵機が視界から消える。ジャンプをする形で飛び越えようとしたようだ。
すぐさま視線で後を追い背後に回った敵機の攻撃に備える。
(そこか!)
「ガッン」
右脇腹付近を狙ってくる攻撃を察知し、爪を避けると同時に肘で敵機の頭部にスピニングバックエルボーを食らわした。
「今だ!!」
敵機が体制を崩した瞬間にそのままもう一回転しながらサーベルでコクピット目掛けて横払いをする。
「カーン」
金属が切断される甲高い音がすると共に、敵機は…動きを止めた。やったか。
「ハルト…お前ただもんじゃないな…助けに入りたかったが入る隙がなかったぞ」
「はぁはぁはぁ…い、いえ。何とかなりました。」
「よし、回収部隊を待って帰還しよう。周辺の警戒は俺がするがまた何があるか分からないから注意してくれ」
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そうして回収部隊と合流してボノニア国まで戻ると再び拍手喝采で迎えられる。また英雄に仕立てあげられてるようだ。
「お前は紛うことなき英雄だよ。また助けてもらったな。」
イーサンの言葉を聞き、ようやく生を実感した。
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「せ、先輩…おえぇ…」
黒い敵機のコクピットまで登って中を見た若い男がもう1人の男に嘔吐しながら話しかける。鹵獲した黒い敵機の見聞をする任務を負った2人の整備士だ。
「こいつは凄まじいな…しかも中のパイロットだけスレスレで切られてやがる…まるで崩れた豆腐だな…とても中は見れたもんじゃねぇ…」
ベテランの整備士が落ち着いた口調で話す。ベテランにとっては慣れっこなのかもしれない。
「おい、無理ならお前は休んでろ。さっさと仕事終わらすぞ…」
そう言いながらまずはコクピット内の清掃から始めていく。
「ん…?なんだこれは?カードか?なんて書いてあるんだ?血でよく見えねぇな白…高校?」
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帰還してしばらく俺はベッドに倒れ伏した。アドレナリンが出ているのか眠れはしない。運良く生き残れたが今後はどうなるか…
そのまま眠れずにいるとノックする音が聞こえる。ドアを開けるとイーサンがいた。
「お前のおかげで助かったよ…本当に何者なんだあの剣さばき?尋常じゃないぞ。」
「昔たまたま剣を少しやってて…」
「なんにせよ助かった。そういえば、向こうのコクピット内の見聞がさっき終わったらしい。なんかパイロットのカードが出てきたようでな。確か白稲高校とか書いてあったらしいがなんの事かさっぱり分からん…敵さんの正体を突き止める手がかりになるといいが…」
暫時、空白の時間が流れる。
「ん?おい?どうした?」
「すみません、気分が優れなくて…」
そう言いつつ俺は扉を閉める。
「ウゥ…」
その場に崩れ落ち、自然に口から声にならない声が漏れる。
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その日俺は同級生を手にかけた
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