戦争
そこからしばらくは慌ただしい毎日だった。
ボノニア国からは量産機であるトレッカーⅡを支給されたが、これをカスタマイズする作業があったからだ。俺1人では動かす事は出来ないため、必然的にロゼに同乗してもらう必要があるし、装備も考えなければならない。戦場に立たされる事になった以上中途半端な自分に合わない装備で出撃する訳にはいかない。
イーサンからは銃を勧められたが、そんなもの撃った経験もないので今まで通りサーベルを主兵装にするようにメカニックには頼んである。
俺からのメカニックへの要望は、
まずは①複座式、そして自分の強みを活かすため、②装備はサーベルと剣の操作の邪魔にならない小型の盾、③機体は可動域を広くしなるべく軽量化してもらった。
また、あわせて周辺情勢及び操縦に関する知識も学ばなければならなかった。
周辺情勢としては、カエサリア帝国が最近勢力圏の拡大のために隣国への侵略を行っているようで、ガリソン商業連合とカルナック砂漠連邦と交戦状態にあるようだ。ガリソン商業連合は、アルビオン王国と同盟関係にあり、そのアルビオン王国は隣接する国土の大半が氷に覆われているが、豊富な資源採掘量を誇るノルドラ氷雪公国と戦端を開いているため、ガリソン商業連合も応援を送っているようだ。
ただ、今回の襲撃犯はカエサリア帝国でもノルドラ氷雪公国でもないようで、拾った腕を解析しているが所属を示すものは何も無く、未だに結論は出ていないらしい。そもそも、遭遇地点はガリソン商業連合の領内で、発覚されずにそこまで他国がたどり着く事自体が困難なようだ。
「よう、やってるか?」
頭に包帯を巻いたイーサンが扉から入ってくる。先の戦闘で頭部に裂傷を負い入院中だが、他に目立つ怪我はなく暇らしい。中々しぶといものだ。
「俺たちが不甲斐ないばっかりに迷惑をかけて悪いな…少しはこの環境に慣れたか?」
イーサンがバツが悪そうに話しかけてくる。
「覚えることが沢山で…。知り合いもいないので話す人もいませんよ」
「そうだよな、よし、今度操縦士仲間を紹介しよう。」
「あの人はなんて名前でしたっけ?確か上等兵って紹介してくれた。」
俺は頭にイーサンと一緒に俺を山賊から救出してくれた若者を思い浮かべながら話す。見た目がかなり若く見え、イーサンもひよっこと言っていたのできっと同年代だろう。
「…」
沈黙が訪れる。
「ラナ軍曹か…もう居ないんだ。」
(軍曹?そんなに階級が上だったかな?)
そう考えていると、イーサンが重い口を開き声を絞り出す。
「俺が助けてやれなかった…」
そこまで聞き、自分が戦争と隣り合わせにいることをようやく実感した気がした。
「また後で話そう。病室で退屈してるんだいつでも来てくれ」
そう言い残しイーサンは去っていった。自分がしようとしているのが試合ではなく戦争という現実を突きつけられ、俺は重い雰囲気のまま午後のブリーフィングを受けた。
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そうしてしばらく経った頃、俺専用の機体が完成したという連絡を受け格納庫にロゼと一緒に向かう。
「なんだぁ?妹も連れてきたのか?こんな所まで?」
整備員のおじさんが声を掛けてくる。仕方ないだろう動かせないんだから。
「ちょっと乗って試しに動かしてみろ。気になるところがあったら調整するから言ってくれ。」
見上げると、イーサンたちが乗っていた機体より一回りスリムな機体が鎮座していた。やはり男だからなのかこういうものにはワクワクしてしまう。子供の頃に見ていたロボットアニメの登場人物になった気分だ。
「お前が軽量化しろっていうから装甲を取り外して高機動モデルのを付けたんだ。どうよ悪くないだろう?」
おじさんが自慢げに言ってくる。
「ありがとう!要望通りだ!」
俺はロゼを連れてコクピットに乗り込む。
ロゼに魔力を込めてもらい起動しようとしたその時、突如施設内にアラームが鳴り響く。
「総員、戦闘配置に付け。」
戦争の音だ。
「ロゼ!頼む!」
そう言うと、ロゼが魔力を込め機体が起動する。
「哨戒任務に出ていた当国所属機が正体不明の敵機と遭遇。撤退中だが、なお、敵機は城壁目掛けて追撃中との事。至急出撃し僚機の救助及び敵機の撃滅に当たれ。」
通信が入る。訓練でもなんでもない戦争だ。
そうして一度も操縦したことが無い新たな相棒と共に俺は軍人として初めて戦場に赴く。これが戦争なんだ…
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機動兵器コレクション
ガリソン商業連合、ボノニア国 機動兵器
トレッカーⅡ〜救国の英雄〜専用機
全長:15.2m
本体重量:45.9t
トレッカーⅡの装甲を軽量化し、機動力と運動性能を向上させた複座式のハルト専用機。
反面防御性能は低下しており、直撃を受けずに操縦する技量が求められる。
武装としては実体剣を装備しており、遠距離武装は持たない。




