第8話「文化祭の嵐と、禁断のメイド喫茶!」
※(作者の都合により時空改変していますが、これはギャ
グ多めのラブコメです。人物知る程度にしておきましょ
う)
また、時系列とか気にしたら負けだぞ☆
by桐見川真緒(原作者)
第8話 文化祭の嵐と、禁断のメイド喫茶!
天使、悪魔、女装騎士!?
文化祭前日。
校内はいつも以上に騒がしく、廊下を走る生徒、教室で作業に追われるクラスメイト、そして騒ぎの中心――2年B組、塩田陸&夜空美来が所属するクラスも例に漏れず大混乱だった。
「えっと…看板どこいったの!?誰!?“メイド喫茶(※ただし美来だけは戦力外)”って書いたの!」
「ちょっと待って!?どうして私だけ戦力外なの!?」
「そこに“天使の威厳が破壊されるから”って書き足されてる…」
「っっもうぅぅぅ!!!」
机の上で発見された謎の書き込みに、美来は顔を真っ赤にして怒っていた。…が、その横で陸はガムテを口にくわえたまま、何かを組み立てている。
「おーい、陸!こっちのステージパネル運んでくれー!」
「…ったく、文化祭ってのは体育祭より筋肉使うんだな…」
「さすが“悪魔系男子”、力仕事も黙々とこなすぜ…」
「“悪魔”って言うな。あと、その陰で俺の机にこっそり“顔面凶器はメイド服禁止”って貼ったやつ出てこい」
「それ、先生が貼ってました」
「……おいコラ担任」
そして迎えた文化祭当日。
2年B組の企画は、時代に逆らわない王道企画【本格メイド喫茶】。
文化祭という非日常の空気も手伝ってか、教室は黒と白を基調にした装飾でおしゃれカフェと化し、男子はバーテン風衣装、女子はメイド服でお出迎え。
そしてなぜか――
「りっくん、なんでその服着てるの…?」
「……事情があってな」
「メイド服、似合ってる…すごく似合ってるんだけど…!!なんで私より完成度高いのっ!?」
「俺だって望んでやってねぇよ!」
そう、陸は“くじ引きで女装班に選ばれる”という、ある意味運命に導かれたのだ。
黒いロングのウィッグに、ややタイトなメイド服。無駄に似合っている自分に、陸自身も少し引いていた。
(なんで俺の人生、どこ向かってんだろうな…)
「陸様っ…スカートの揺れが美しいです…!」
どこからともなく現れたのは、真白。
彼女も私服で文化祭に訪れており、早くも“推し陸”モード全開である。
「ちょっと真白ちゃん!今日はお客さんでしょ!?勝手に厨房入っちゃダメ!」
「いいじゃん!だって私、今日“りっくん専属メイド”って気分で来たんだもん!」
「はいはい却下!そもそもここ、2年の企画だから!」
「うわーん!じゃあせめて美来先輩も女装すればいいのにぃ!」
「私、女装じゃなくて“ただのメイド服”だもん!?」
そして午後、事件は起きた。
3年生主催の演劇「王子と女騎士と呪われた運命」の主演に、まさかの代役として陸が出ることに。
「――主演の男子、急にインフルって…塩田くん!あんた、背丈も雰囲気も合うわ!女装もしてるんだし!」
「おい、だからなんで女装してるって前提なんだよ俺は!?」
「いいから!もう時間がないの!」
こうして、女装騎士として舞台に立たされた陸。
相手役は…まさかの、美来だった。
「ええええっ!?なんで私まで!?」
「ヒロイン役、ちょうど空いたから。さっき“演劇部に興味あるかも”って言ってたでしょ?」
「“あるかも”って言っただけですぅぅぅ!!」
舞台は開幕。
観客席には、真白、菜乃葉、さらには美来の兄・優斗までが観に来ている。しかも警察の制服姿で。
(なぜ…職務中に来てるの…)
舞台のラストシーン。女騎士(陸)はヒロイン(美来)を救い、告白するシーン。
「俺は…お前を、守るって決めた。どんな運命も、呪いも、お前となら――超えていけるって思ったんだ」
「騎士様…それって、私のこと、好きって――」
(やばい…セリフ通りなのに、本音が混じりそう――)
陸と美来、息を飲む観客、まるで本当に恋人のような間合い。
――直後。
「ちょっと待てやコラァァァァ!!!」
客席から飛び出したのは、美来兄・優斗。
すかさず警棒を振りかざして陸へ向かって突撃。
「そのセリフ、台本超えてたろ!妹口説いてんじゃねぇぇぇぇぇ!!」
「落ち着け職質兄ィィィィィィィ!!!!!」
舞台は中断、観客は爆笑、そして担任は「まぁウケたし良し」と満足げ。
文化祭が終わった夕方。屋上に2人。
「…私、陸と一緒に舞台できて嬉しかった」
「俺は…あんま余裕なかったけどな。マジで怒られたし」
「ふふ、でもあの告白セリフ、ちょっとドキドキした。…演技だったのかな」
「…どうだろな」
視線が交わる。ほんの一瞬、時間が止まったような気がして――
「りっくん!」
「あ、真白…」
屋上のドアが開き、真白が嬉しそうに走ってくる。
「来年、私も文化祭出るからね!…来年は絶対、私がりっくんと主役やるんだから!」
「ええええええぇぇぇぇ!?」
またしても、日常は崩壊し始める。