特訓① 身体能力
カナリアはシルビアに着いていくとそこは外だった。
「すごい……豊かな場所だな」
自然の真ん中にいるカナリアは心奪われこの光景に口が勝手にしゃべっていた。
少し歩いたところでシルビアは止まり右手を胸部分に持ってきて横へ一気に振った。瞬間、徐々にあたりが真っ白い空間に変わっていった。
「森を利用したの身体能力の訓練でもいいのだが今のお前ではすぐ死んでしまう。だから最初は体力を付ける! と、いうことでさっさとあの端まで走って戻ってこい。さあ! いくのだ!」
身体能力の訓練というのだから要は体力作りや筋力の強化などを予想していたがまさにこれである。ただこの空間の端を走ってこいなんておかしなこと言っているのに違和感を感じながらも走り始めた。
数時間後
(おかしい……! 何かがおかしい!)
何時間も走っているのに目的の端まで到底つかない。この空間は壁がすぐそこにあるはずなのに終わりが見えない。
その後
「はぁ……はぁ……よぉやく……おわ……っがぁ」
端まで辿り着きそれからスタート地点まで全力ダッシュで戻ってきた。獣人の体力は基本高いのだがこのような長距離ではさすがに息を切らすのである。
「ほお、思っていたより早く着いたな。よし、次はこの森を走れ。安心しろ、ここではお前が死んでも生き返る……というか時間が戻るっといった方がいいのか……まあ、俺もこの原理は正味わからんがほら! 行ってこい!」
先ほどまで長距離を走らせたのに今度は森の中を走れという無茶苦茶なことを言われ……それはそうとなんだ? 死んでも? 何を言っているんだ?
そんなことを考えながら森の中へ入っていったがその答えはすぐにわかった。
◇
この光景はなんと説明すればよいのだろうか……カナリアは今、木に――いや木のツタに足を絞められ無力にぶら下がっている。
時は遡り森へ入ってからすぐだった。それは森の境界に踏み込んだ瞬間、カナリアの足に何かが引っ掛かりそのまま投石機のように投げ飛ばされてしまい今に至るのであった。
「まあ、こうなるのは当然か」
シルビアはこのことを予想していたようで軽く笑いながら森の奥からぶら下がっているカナリアに近づいてきた。
「と、いうと?」
少し気分を悪くしてしまいあまりしゃべりたくないカナリアであるがこの森は彼の手によって造り上げたものなので場合によっては殴り付けようと考えている。
「お前は何も考えずにただ走っていけばいいと思っていただろ? この森にはこのように罠がある。ちなみにこれはまだ優しい方だぞ」
そういいながら先ほどカナリアが引っ掛かっていた罠に親指を指した。
「じゃあどうすればいいんだ? もうそれは野生本能で見分けろと言っているようなものになってしまうが?」
「うむ、それは俺でも無理だぞ」
カナリアは「ではどうすればいいのだ」と目線で訴えた。
「お前は今、何もスキルを発動していない状態で走っているから無理なのだ。そこで活躍するスキルが鑑定スキルと気配察知、危険察知、それと一応探知も覚えておくか」
鑑定スキル:生物、植物、その他のものを対象に様々な情報の詳細がわかる。
気配察知:相手の気配がわかる。
危険察知:自分の危機を事前に察知する。
探知:周りの地形を把握することができる。気配察知と危険察知を組み合わせること戦闘に有利になる。
「で、それはどうやって習得するのだ?」
「気合いだ」
「ん?」
「気合いだ」
カナリアはスキルを習得と言えばスキルの書などのアイテムがくると期待していたが自信満々にどや顔で応えるもので何かが一瞬にしてプツンと切れた。
「待て! ちゃんと教えるから! 頼む! 無言でこっちに来るな! ウギギギギギ!!」
カナリアは神獣相手に容赦なく締め技を決められ森に悲鳴が響いた。
「それで結局はどうやってそれらを習得するかだ」
どこかすっきりしたカナリアはシルビアにしていた締め技を開放し再度習得方法を問う。
「一応二つあるがそのうちの一つが気合いでもあるんだ。だからこのスキルたちはこの環境だからこそ自然に取得することができる。その方法はお前が見つけ出さなければ意味がないのだ」
「……なるほど」
気合い、それは自身の特訓の成果というものだと理解した。
スキル習得のためカナリアは先ほど自分が罠にかかったツタを眺めた。そこには何かチカチカと輝いている。
(これは……魔力……なのか?)
目を凝らすことでようやく魔力と思われしものが見えた。
(これは……全然わからん)
それからカナリアはあちこちに光る魔力を観察しどの罠にどのような種類の魔法が使われているのか考察をしながらシルビアからもらったメモ帳に記録した。
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罠種類
ツタでの締め上げ 使われていた魔法 植物魔法
落石 ヽヽ 土魔法
落とし穴 ヽヽ ヽヽ
氾濫 ヽヽ 水魔法
台風 ヽヽ 風魔法
ツタによる鋭利の浮遊・射出 ヽヽ 植物魔法によるツタの形を変え浮遊・射出
水による鋭利の浮遊・射出 ヽヽ 水魔法による水の形を浮遊・射出
食虫植物 ヽヽ 植物魔法
山火事 ヽヽ 火魔法
氷河期 ヽヽ 氷魔法
隕石 ヽヽ 土魔法を自由落下 重力魔法は極めて低い
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森を進んでいくにつれてさまざまな植物たちを見つけそれも記録した。
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生えていた植物たち
キノコ:うまかった
小さい草:苦かった
よくわからん草:苦みがあるが傷が治った
大きいキノコ:まずかった
花:綺麗だった
お花畑:すごくきれいだった
虹色のキノコ:そこらに歩いていた動物に与えたら泡吹いた
白い花:間違えて水にぶち込んだけど飲んだら体のすべての気分が吹っ飛んだし傷も治った
食虫植物:襲ってきたけど意外とおいしかった
なんかしゃべる植物:優しい植物でいろいろ教えてもらった
妖精の植物:この植物を採ったら妖精が欲しがっていたのであげたら妖精が頭の上で飛び回って喜んでいたみたいだからそう呼ぶことにした
カンナビス:動物の目がキマってた
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森なので当然生き物も生息している。
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森に生息していた生物
犬:かわいかった
猫:ふわふわだった
豚:おいしかった
狼:群れだったが襲ってこなかった
ゴブリン:襲ってきたけど弱かった
大っきい狼:集団だったけどなんとかなった。体に紫の石が入っていた
食虫植物:種類はいっぱいだったがなんとかなった
赤い鳥:弱っていて紫の石を欲しがっていたのであげたら元気になりお辞儀をしてどこかへ飛んでいった。その際になんか粉かけられた
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「……ここどこだ?」
それはある興味心から始まった。
◇
「あんなところに巣でもあるのか?」
森の中でほかより高く大きいな木が生えているところがあり、大きな鳥が行き来していたので巣でもあるのか気になり樹頭まで登ることにしたのだ。体内時計では何時間かかかっているのにまだ半分しか登れていないという圧倒的高さを誇る木であった。それでもカナリアはノシノシと愚痴もこぼさずにようやく登りきることができたのである。
「疲れた……ではでは、ここには何があるか――」
頂上まで登ることができたカナリアは一息し何か面白いものがあるのか期待していた一瞬の気を緩めたせいで背後から飛んできた巨大なものに気づくことができず「パクッ」とくわえられどこかへ飛んでいきしばらくして「っぺ」っと捨てられ、大きな穴に落とされ今に至るのである。
「しっかしあの鳥は鳥なのか? あれは鳥っていうか――」
巨大な生物がカナリアをくわえるまでは鳥だと思っていたがそうではなかった。大きいことには変わりないが異様にも歯が鋭く、鳥が持つ羽毛がなくゴツゴツとした皮のような羽だった。それにちらちらと尻尾のよなものも見えた。特徴を思い出しあの巨大生物の謎を解明しようと推理して結論に至るまでにその答えが今カナリアの後ろにいるのである。
ものすごい鼻息をカナリアに吹きかけられカナリアはヒュッと息を飲んだ。心臓がものすごい早さで動き、今まで出くわした生物の中で最も強い生物が彼女の後ろに立っているのだ。
カナリアは恐る恐る後ろを振り返ったその先にいたのは……
「――グォアアアァァ!!」
ワイバーン、それもカナリアをくわえここへ吐き捨てていった方よりも倍の大きさのワイバーンであったのだ。