心臓のない僕は恋を知らない
僕は生まれつき心臓がない。
どうしてなのかは分からない。
どうして死なないのかも分からない。
父と母は僕の心臓が未形成で生まれてきたことを知らなかった。だから僕が生まれて医者が心音を聞こうとしても聞こえなかった。
まぁ当然だけど、当時はもう大慌て。何せ心電図を取れないからさ、本当に僕が生きているのか分からないよね。だけど僕はしっかり産声をあげたよ。だから何も問題はない。
そんな僕は心臓がないだけで外見はしっかり他の人と同じ人間だよ。母譲りの茶髪に、父からもらった黒い眼。容姿はイケメンじゃないけど、磨けば光る。勝手にそう思い込んでる。
僕は今17歳の商業高校の高二。名前は月御世東生誕生日は四月だから周りの人より早い。それはちょっとした自慢かな。ちなみに僕は心臓がないから運動ができないんだ。運動は必ず避けろって医者に言われてる。だからみんなが体育で楽しいこととか嫌なことをしているときは、先生の補助だったり、ボケーっとみてるんだ。
「東生、部活行くぞ。」
「分かった先に自販機行ってくるよ。」
「おけ。先に行ってる。」
そういって僕に話しかけたのは同じ部活仲間の広宮翔吾。正直誰もが認めるイケメンってのが良い。真っ黒な髪をして、引き込まれるような緑色の眼をしてる。何かと僕を気にかけてくれる優しいやつ。他にもいる。
小与田隼人。彼は韓国人とのハーフ。だからこいつもイケメン。いつも髪の毛をセットして先生によく注意されてるが、女子生徒の圧に負けて先生が見逃してる。金髪だからよく目立つ。
公逢蓮二郎。モテないけど勉強できる。
こいつはフツーの高校生。昼休みは基本寝てる。
僕の友達はこんな感じ。
あとは……。
「月御世先輩。今日も何か飲むんですか?」
「うん。その感じだと夢乃のかな?」
「その通りです。ラッキーなことに今日は
先輩に奢ってもらえるので。ニヤニヤ」
そう言って僕の腕に巻きついてきた。
この子は一年生の平山夢乃。同じ部活だ。
一年生ながらにその顔はすごく広い。
容姿端麗で、鼠色の髪の毛をしている。よく校内でナンパされてるみたい。だけど勉強が苦手らしい……。
「じゃあ問題を出すからそれに正解できた らね。」
「もし私が間違えたら先輩の女の子になりますよ。」
「やめなさい。そういうのは好きな子にしてくれ。」
「問題。お金を年税率3%で¥500,000を8ヶ月貸しました。利息は一年でいくら?」
商業高校生ならこれは基礎中の基礎の問題。簿記やビジネスにおける基本だからこれが解けないとちょっとまずい。でもまだ入学してから2ヶ月。でも行けるでしょ。
夢乃は必死に考えていた。どうやら彼女にとって難問らしい。
「えぇっと……。8ヶ月だから……。12分の8で……。あぁっとーーー。」
そんなに悩む問題じゃないんだけどな。
答えは綺麗に割り切れるから出たらこれが答えだ!ってなるハズ……。がんばれ後輩よ。
「わ、分かりました!答えは5000円ですね!」
「はい、ハズレじゃあ奢りは無しね。」
「ちょ、ちょちょ!待ってくださいよ先輩!」
「どうした?簡単な問題だよね?」
「は、はい!イージーです!イージー!」
どこがイージーだよ……。全く困った後輩だ。その後、夢乃と部室へ向かって行った。部室は3階だから少し遠い。
ちなみ階段とか、小走りなら僕は大丈夫。
なんでかは分からない。あと100年したら分かるかな?
「先輩って、心臓ないんですよね?」
「私の中には存在しえないのだよ。」
「じゃあ、こうしても、ですか?」
その時夢乃ギュッと俺に抱きついてきた。
……何してんだこいつは全く。
てか、ここ人通り少なくて良かったわ……
見られてたら確実に終わってたよ。
タイミングが良いのか悪いのか分からん。
「あのな夢乃」
「心臓の高鳴り感じませんか?」
「うん。感じない。ミジンも感じない。」
「じゃあ、感じるまでこうしてます。」
「あっちのやつにしたほうがもっといいぞ。」
その時窓の外に映る坊主頭の野球部に視線を移した。
「あんな坊主頭より、私はこっちのほうが……あ!」
「はい、おわりー。はい部室行くよ。さっきの問題解かないと。」
「も、もう少しくっつきたかった……。ボソッ」
「ほら、早く。」
その時夢乃は少しムッとした顔をしていた。
なんださっきの問題が解けなくて怒ってるのか。
「ちゃんと教えるから。」
「わ、分かりました……。」
そうして3階の角部屋の部室に到着。もう既に全員が揃っている。
「東生、遅いぞ。」
「ああ、ごめん。後ろの人間に抱きつかれて剥がすのが大変だった。」
俺はそう言って。席についた。
なぜか全員がこっちを見ている。
なんだ?なんかしたっけ?あぁ、あれか。
その内バレるって分かってたけど……。
「髪の毛にお菓子仕込んでるのバレた?」
そう聞くと俺はより周囲から視線を集めた。
どうやら違うらしい。おかしいな、絶対にこれだと思ったんだけど……。
俺は隣に座る夢乃に聞くことにした。さっき一緒にいたし夢乃なら分かるでしょ。
「夢乃あのさ………え?何してんだ?」
「………///〜〜〜♡♡」
顔面を真っ赤にして机を伏せている。
……。熱か?バレるのが恥ずかしいからきっと顔を隠してるに違いない。
「おい、体調悪いなら無理すんなよ」
俺はそっと耳元で囁いた。こう見えて空気を読める人間なので。心臓ナイケド………。
「っ!ち、違います!!」
顔をこっちに向けて距離を取られた。
なんだ熱じゃないのか。なら良いか。
その時後ろの翔吾に肩をトントン。とされた。
「どうした?なんか分からないところがあるのかい?」
「ちげぇよ。あんまいじめるなよ。」
「?」
「?じゃないよ。全く、自称空気読める人間は嘘じゃないか……。」
「嘘じゃないよ。ちゃんと空気は読めるから安心したまえ。」
「安心できないよ……。例えば」
「あぁ、わかったわかった。」
全く翔吾の察しの悪さには困る。僕はしっかりと空気を読んで行動してる。だから自分の行動が必ずしも正しい……わけじゃないけど……。
「せ、先輩……。し、死にそうです……///」
ありゃ……。俺は翔吾との会話をやめて夢乃と向き合った。
うーん。確かに顔は赤いな。緊張で死にそうなのかな。だとしたら僕には分からないな。
そっと手を伸ばした。
その手は額に触れた。
手から伝わる温度は発熱しているものとは考えられない。
「おいおい!東生やり過ぎだ!」
「え?」
「はいはい。そこ席を離そうか、それから間に俺が入る。目の前でイチャイチャしないでもらって。」
「イチャイチャしてないよ、蓮二郎。誤解はやめとくれ。」
「あーわかったわかった。」
そういって蓮二郎は俺と場所を変わり。
俺は蓮二郎が座っていたであろう、隅へと追いやられた。
あいつ歩いてきてたのか……。
「あのね月御世くん。女の子に気安く触れたらダメなのよ。」
「いえ、死にそうだって言ってたので心配でやったことなので仕方ないです。」
そう言って柔らかい声が隣から聞こえてきた。
まず目に入ったのは綺麗な深い青色の髪ロング。
そして綺麗な青緑な眼。
綾瀬夕愛だ。
「いや、僕はただ……。」
「うーん?あれはセクハラも考えられるよ?」
「いえ、多分本人の同意もあるので。」
「へぇーそうなのね……。まぁ、勉強をしましょう?」
「あいあい。」
そう言って持っていたバッグから数学の教科書を取り出した。
一方夕愛は簿記の教科書を広げている。
「あのね月御世くん。この部活は商業科目しか勉強してはいけないのよ?」
「バレないから大丈夫大丈夫。」
そう言って結局数分後には先生にバレた。
「じゃあ帰りましょう。」
「はーい。」
今日の部活は早く終わった。
今は夕愛と階段を降りている。
帰りはいつも夕愛と同じ。
中学から同じだから方向がほとんど同じだからね。
「じゃあ、あっ!」
ドサッ!
夕愛が階段から落ちた。落ちた段数を数えると4段。結構な高さから落ちた。
すぐさま駆け寄った。
「だ、大丈夫?!」
「イタタタッッ………。」
「立てそう?」
「む、無理かも……。」
少し目が涙ぐんでいる。
結構痛かったのだろう。
こういう時に背負ってあげるよ。とか抱えて保健室に運ぶことができるがあいにく心臓がないから僕にはできない……。
だからこういう時僕は肩を貸すことしか出来ない。
「肩、貸すよ。」
「で、でも月御世くん、心臓が……。」
「いや、これくらいはできるよ。ほら、早く早く。」
「あっ!ちょ、ひゃあ!」
「ちょ、へ、変な声出さないで!」
「だ、んっ!」
夕愛が暴れるため時折、胸などエッチぃところに何度も当たってしまった。
だが悪気はない!
「保険室に行くよ。」
「うん……ごめんね月御世くん。」
「大丈夫。」
夕愛がバランスを崩さないように夕愛の右手は僕の首に回している。
「……あ、あの月御世くん。」
「?」
「その……腰にある手がくすぐったい……///」
「あ、ごめん。」
そっと腰に回していた手を退けた。
これはいかんいかん。セクハラになってまう。
「おー。後輩ちゃんから浮気?東生。」
階段の後ろから声がした。
今は振り返られないが、きっと蓮二郎だ。
「モテモテだね。」
「うるさいよ蓮二郎。」
そう言ってサッと階段を降りて帰っていった。何をしたかったのやら……。
「……?夕愛?」
「な、なんでもない……///」
「顔、赤いけど?」
「な、なんでもない!手、手をおでこからどけて!」
と必死にお願いされた。
「あ、あぁ……。」
「あ、あのね月御世くん。」
「はい何ですか?」
「女の子に触れるのは彼女だけにしてね……。」
「はい、じゃあ夕愛は彼女みたいなのでそうします。」
「ち、違!そ、そういう意味じゃなくて!」
「はいはい冗談です。」
どうしてだろう心臓がないのに、ドキドキした。
……気のせいか。
僕はそのまま夕愛を保健室に送り夕愛は結局車で帰った。