8 堂島財閥会長『堂島玄一郎』
今回はちょっとシリアス?
「ふむ。解った。あとはワシが処理しよう。」
通話を終えてため息をつく老人がいた
あのバカ孫め···。また面倒事を起こしおって···
老人は広い部屋で1人呟き、何処かへ電話をする
「ワシじゃ、すまんがまた仕事を頼む。今回は···」
要件を伝え終わると老人は豪華な椅子の背もたれに身を預ける
(困ったもんじゃ···。そろそろこちらも擁護できなくなる事に気が付かんのか。やはり息子夫婦の教育が悪かったのかのぅ?いや、仕事でまともに接して来なかった大人の責任···か)
そんな考えをしつつ、遠い目をしていると、どこからか声がしてきた
『お前が堂島勇の祖父か?』
「!?誰じゃ!!?今この部屋にはワシ1人だけのはず!!?」
人どころか蟻1匹いないこの部屋で、人の声がする筈がない
平常を装いつつ周りを見るが、やはり人の気配がない
『質問に答えろ。堂島勇の祖父で間違いないか?』
「····そうじゃ。ワシが堂島勇の祖父堂島玄一郎じゃ。こちらは質問に答えたぞ!!そちらも姿を見せるか、せめて名を名乗れ!!」
質問に答えたのだから、こちらも質問をする
本心では「返答はないだろう」と思いつつも、面子を立てる為の虚勢だ
『····成る程。大した胆力だな。···我は影の観察者だ』
「!!?」(影の観察者だと!!?まさか実在していたのか!!?)
『影の観察者』
その名を聞いた瞬間。部屋の空気が重く感じ、全身の力は抜け、汗が吹き出し、動悸が激しくなる
(バカな!!?影の観察者と言えば絶対に敵対してはならない者!!目をつけられたら全てを失う···いや、消滅すると言われている存在じゃ!!)
玄一郎の考えはほぼ正解だった
『影の観察者に目をつけられた者は富·名声·財を全て失う。しかし、それだけではなく、対象はこの世からも消滅させられる。
しかも対象の周りにある対象の記録、記憶さえも消される···。
文字通り
『対象の全てを消滅する存在』
そう言われているのだ。
では何故その存在を知っているのかと言うと、記録は当然残らないが、記憶は少し違っている。厳密には『対象と深い関わりのある者の記憶を重点的に消滅させている』のだ
よって『関わりの浅い者の記憶』は残る
記憶が残りはするが、元々浅い関係の為、自然と忘れられていくからだ
「観察者殿がワシにいったい何の用じゃ?」
震えを抑えつつ質問をするが、答えの検討がついている
孫の勇の事だろう
今まで何度も注意をして来たが、一向に改善されない愚かな孫
勇が何か事件を起こせば、玄一郎が裏から手を回し、世間には知られない様にしていた
『一つ問う。お前はあの愚者が起こした事件の被害者に対して、秘かに援助をしていると言うのは本当か?』
そんな事まで知っているのかと冷や汗が出る
「···。そこまで知っているのか。そうじゃよ。ワシはあのバカ孫の被害者に対してできる限りの援助をしておる。受けた心の傷は簡単には癒えぬが、せめてもの贖罪としてのぅ」
「何故と言われれば、一応ワシの孫が原因じゃ···一応成人してはおるが、ワシからすればまだまだ子供じゃ。子供のしでかした事に対して、大人が責任を取らなければならぬのは何処でも同じでは無いのか?」
『···』
「しかし、さすがに観察者殿が出て来るほどの事をしでかしたのでは、もう諦めるしかないのぅ」
玄一郎はため息を吐いて全てを諦めた顔する
『···どちらか選べ。一つ、あの愚者の消滅を認めて全てを忘れるか』
「···」
『一つ、今までの事件被害者に対して、お前が支払った金額をあの愚者本人に払わせるか』
「っ!?なっ!?」
『答えは明日の夜に聞きに来よう。···わかっていると思うが、下手な事はしない方がいいぞ。お前の行動は全て見ているのだからな···』
そう言い残すと観察者は去った様で、部屋の空気が軽くなるのを感じたが、玄一郎は動く事ができずに気を失った
次回『決断とクズの末路』
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