42 カラオケと歌声
「それで、何か付加価値を付けたいのよ。例えば『手品を披露する執事がいる喫茶店』とか」
麗華が例をあげる
「なるほど。ショーみたいな感じですね?」
メモを書きながら頷く
「でも手品だけじゃ弱いわね···。う~ん···」
互いに案を出すが、本決定には弱い···
「駄目ね。気分を変える為に一曲歌わない?折角のカラオケ居酒屋なんだから、歌って気分を変えれば何か案が出るかもしれないわ」
「そうですね···でも俺歌知らないですよ?テレビもない家ですから···。携帯も調べものするくらいで、歌はほぼ知りませんよ?」
影司は携帯を持ってはいるが、麗華達との連絡と、調べもの以外に使わないため、音楽は喫茶店勤務時に聞くくらいだ···
たまにラジオ放送が流れるので、その時のリクエストで流れる歌くらいしか知らないのだ。
「まぁ、いいから。それじゃあ、私が先に歌うね?」
支払いパネルにICカードをタッチさせて選曲した曲を入れる
すぐに曲が流れ、麗華が歌い出す···
「お~!!お上手ですね!!(なるほど、カラオケとはこう楽しむのか)」
歌い終わった麗華に拍手をして褒める影司は初めてカラオケの楽しみ方を知った。
ここに来るまではカラオケとは無縁の生活だったので、新鮮なのだ。
「じゃあ、次はこの曲を入れよう。これなら影司君も聞いた事あるはずよ。」
気分がのったのか、麗華は支払いパネルにICカードをタッチして、曲を入れる
次に流れてきた曲はラジオで聞いた事のあるものだった
「確かにこれは知ってるな。なるほど歌詞はこうなっていたのか···ふんふん···」
麗華の歌を手本に歌を呟く影司
歌が終わり、麗華がマイクを差し出す
「はい。次は影司君の番だよ」
マイクを受けとると、麗華が支払いをして選曲をする
歌が始まると影司は集中して歌い出す
~♪
「···うまいわね。」
麗華は影司の歌声を聴いて驚いていた
「お待たせしま···」
『山盛り豚の角煮丼』を持ってきた店員は、影司の歌声を聞いて固まった
「(こっちに置いて···)」
手招きして丼を置かせる麗華に店員は質問する
「(お待たせしました。あの···失礼ですが···あの人プロですか?)」
麗華は笑いながら首を横に振る
「(違うわよ。唯の喫茶店店員よ。ちょっと顔が強面だけど···ね。)」
「(そうなんですか?歌のサービスとかやってないですか?やってない?でも、一度行ってみたいですね。)」
「(ここで開店してるから、良かったら来てね)」
麗華は名刺を店員に渡すと店員は名刺を見て驚いた
「(店長さんでしたか!!失礼しました!!是非お邪魔させていただきます!!それでは、失礼しました!!)」
頭を下げて店員は部屋を出て行った。
「(歌のサービスね···良いかもしれないわね。)」
影司の歌声を聴きつつ、そんな事を考えている麗華であった
次回『カラオケ機器設置計画』




