29 待ち合わせとお詫びの品
第三章始まります
朝8:20
今日は朝から麗華さんの買い物に同行する日だ
「よし!!準備はできた。あとは麗華さんを迎えに行くぞ」
影司の家から麗華の家までは徒歩で最短で50分ほどだ
約束の時間は9:30
『約束の時間10分前には着くべき』と早めに家を出てマンションへと向かう影司であった。
朝からシャワーを浴びて身支度を整える麗華は少し落ち込んでいた
何故なら『昨日、お爺様から受け取ったお詫びを影司に渡し忘れた』からだ
いくら嬉しい事があったとしても、仕事でミスをする程うかれるのは許されない
テーブルに置かれた封筒を見てため息を吐く
お爺様のお詫びの品は翌日の夜に渡されており
『昨日の閉店後に影司に渡そうと鞄に入れて、持って来ていた』
しかし、うかれて麗華はその事を忘れていた。
お爺様のお詫びだが、東次郎と聖人の2人には、伯父から渡されていたのだが、影司は直接渡さなければならなかったからだ。
「いくら何でも自分のバカさ加減には呆れるわ···よく考えたら今週は影司君のお給料は少ない上に3日の休業···さすがに生活が苦しくなってるハズ···私のミスだし···私からも···出すべきね···」
このお詫びとは別に渡そうと決めた麗華は、別の封筒を用意して『謝罪の気持ち』を入れて、お詫びの品と一緒に手提げ鞄に入れたのだった。
時刻は9:10
麗華はマンションの正面玄関にいた。
もちろんオートロックの内側だ。
2分ほど待つと、影司がマンションの正面玄関へと現れた。
麗華はオートロックの扉を開けて挨拶する
「影司君おはよう!早いわね。私に会いたかった?会えて嬉しい?」
嬉しさを抑えつつ、冗談を言うと
「遅れてすみません。もちろん麗華さんに会えて嬉しいですよ!」
さらっと言う影司にちょっと驚き、照れてしまう麗華
「あっ!忘れずに渡したい物があるの!!これ、お爺様から『前の急な休業の件のお詫びとして渡してくれ』って預かっていたの」
鞄から封筒を出して影司に渡す
「良いんですか?結構あるみたいですけど···」
「良いのよ。これはお爺様の気持ちだから、むしろ受け取ってくれないと困るわ。···そしてこっちは···遅れたお詫びとして私からです。ごめんなさい!」
渡すのを忘れてしまった事を(本音はボカシて)話して、鞄からもう一通の封筒を出して影司に渡す
「さすがに貰い過ぎですよ!?これは受け取れません」
影司は封筒を返そうとするが、麗華は「これは私の為に受け取って」と言って受け取らないので、渋々受け取った
「なんか悪い気がして落ち着かないです···」
「でも、あって困る物じゃないから持っておきなさい?それに今週は厳しいでしょ?」
「うっ···確かに···」
麗華が痛い所を突いてくる。
確かにそうだ。これがあれば少なからず、来週末まで余裕で生きていけるだろう。
「···ここはお言葉に甘えて、ありがたくいただきます!!」
礼をして影司は封筒を上着のポケットに入れた。
今日は少し肌寒いのでGジャンだ。これには内ポケットがあるので、そこに入れる振りをして黒影に入れた。
入れた後に中身を確認したら結構な額が入っていたので、少しビックリした影司であった。
次回『戦場へ···』




