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ヘビのお言葉  作者: 羽藏ナキ
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プロローグ

僕はヘビを飼っている。

種類はボールパイソンで、ボールのように丸まることからそう名付けられたニシキヘビだ。ちなみに名前はナツといい、夏にお迎えしたことが由来となっている。

僕は昔から爬虫類、特にヘビが好きでずっと飼いたいと思っていたけど、実家では母が気味悪がって飼うことを許してくれなかった。だから就職をきっかけに地元を離れて念願の一人暮らしを始め、それでやっとお迎えすることができたのだ。


そんなナツとの生活も気が付けば二年が経っていた。二年前は手のひらに乗るサイズだったナツも順調に大きくなり、今では両の手のひらを目一杯広げないと乗らないくらいになっている。

ナツとの生活はそれまで乾ききっていた僕の人生に潤いを与えてくれていた。社会人となり、いままでにない悩みを抱えながらただ家と会社を往復する生活の中に、ナツを世話するという時間とお金の使い道ができただけでもずいぶんと違う。

でも、それで悩みがなくなるわけじゃない。僕の人生のバランスはナツとの生活があってもネガティブな方に傾いていた。


ケージの前で腰を下ろし、はぁ、と溜息をつきながら、今日も僕は解凍した冷凍マウスをナツに与えていた。ナツが成長するに合わせてサイズを大きくしていき、今では一番大きいものをあげている。

ナツが器用にマウスを丸呑みするのを眺めながら、明日が月曜日であることが頭をよぎり僕の気分は沈んでいた。


再び大きな溜息をつく。するとどこからか声が聞こえたような気がした。周りを見渡しているとまた同じ声が頭に響く。


「君は溜息ばかりだね」


まさか、と下を向くとナツと目が合った……ような気がした。

そんなはずはないと思ったが、ナツはS字のような形で身体を起こし、もう冷凍マウスを持っていない僕を動かずにジッと見つめていた。


「ナツ、もしかしてお前なのか?」


僕は恐る恐る訊ねる。

言葉を理解しているのか、ナツは僕の問いに対してゆっくりと首を曲げてうなずいた。


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