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第99話 明日オーディション

 明日オーディションだ。

 覚悟は決まってる。


 決まってるけど……。


 ……どうしよう……。


 まだ迷いがある。

 これって『覚悟は決まってる』って言わないんだよね、きっと。


 今からでもキャンセルはできる。

 だから迷ってる。


 ……俺がいなくなったら、みんなどうするんだろう……。


 ……いや、今はみんなのことは考えない。

 『俺がどうしたいか』が重要だ。


 しかも、俺がいなくなってもたいして変化はないだろ。

 インドア陰キャだし。


 咲羅や実璃には他の友達がいる。

 湊亜には総一朗がいる。

 言音も先輩や友達がいるだろう。

 総一朗は……、……、……、あ、湊亜がいる。

 柚斗は……、……、……! あいつ友達いないかも!


 ずっと独りだし!


 ……いや、言音が相手してくれるだろう。

 うん、きっとそうだ。


 だから今はみんなのことはあんまり考えない……。


 向こうの業界に行ったらもっと他のことが待ってるだろうな……。

 新しい人とも出会う。


 今までの『嫌われ者の木神天太』じゃなくなる。

 ……いや、その前の『木神天太』のほうが俺的には嫌いだけど。


 そうだ、自分が変われるんだ。


 ただ……、もう咲羅と会えなくなるかも。

 咲羅だけじゃなくて、他にも色々な人と。


 高校で最初に話しかけてくれて、ずっと味方でいてくれた総一朗。


 こんな俺に相談してくれたり、二人きりになっても嫌な顔しないでいてくれた咲羅。


 殴り合いして怪我して、それを助けてくれたり、俺を元気にさせてくれた実璃。


 ずっと元気で、誰よりも積極的に話しかけてくれてくれる言音。


 こんな俺を信頼して頼ってくれた湊亜。


 ……普通にプリクラ写真ばら撒いた柚斗。


 柚斗以外の人はみんな優しくしてくれた。


 そんな人と……、離れていいのかな……?


 みんな俺を認めてくれたんだ。


 そんな人と……。


 そうだ、母さんに訊こう……。

 俺はスマホの電源をつける。


 母さんならなんかアドバイスしてくれるかも。


 俺は震える手で操作する。

 なんで手が震えてるかはわからない。


 耳にスマホを近づける。


 『……はい、こちら星楽(ほしらく)アイドル事務所です』

 「……あの、明日オーディションを受ける予定の木神天太です……。番号は『105』で……。その……、明日のオーディション、キャンセルしたいです……」

 『木神さん、ですね……。少々お待ち下さい』


 しばらく沈黙になる。


 『――お待たせいたしました、木神天太さん、キャンセルさせていただきますね』

 「お願いします……、ありがとうございました……」


 俺は電話を切る。


 ……なにしてんだ……、俺……?

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