第97話 家の前に咲羅
「咲羅……?」
「天太……!」
え、なんでそこに立ち尽くしてんの?
めっちゃ濡れてんじゃん。
「と、とりあえず入れ!」
「いや、天太……!」
「ちょっ、咲羅ちゃん!? 入んな!?」
後ろから姉ちゃん。
「天太! 助けにいって!」
俺!?
ま、まぁ、俺しかいないか。
俺は咲羅のところに行く。
めっちゃ濡れる。
俺は咲羅の腕を掴んで、無理やり家に入れさせる。
「咲羅!? なんでここにいるんだよ!」
「私タオル持ってくる!」
姉ちゃんは脱衣所のほうに向かう。
咲羅はただ立ち尽くしている。
「咲羅、お前――」
「――の?」
? いまなんか言った?
「――天太、アイドルになるの?」
……え、なんで知ってるの?
いや、まだ完全になったわけじゃないけど。
「咲羅……、ってか、なんでお前がそれ知ってんだよ……」
「江島からそう聞いた」
え、総一朗のやつ、咲羅に言ったの?
にしても咲羅早くない?
まだ数分しか経ってないよ?
「ねぇ、それ本当なの?」
「いや、まだ完全に決まったわけじゃないけど……。それで、なにしにこんなところまで?」
「アイドルになるのか……、訊きにきた……!」
あ、お疲れ様です。
……って、そんな呑気なこと言ってる場合じゃない。
「ま、まぁ、考え中だけど……」
「なるの……? アイドル」
「本当に考え中なんだ」
「考え中ってことは……、少しでも『アイドルになりたい』って思ってるの……?」
「ま、まぁ……な……」
「咲羅ちゃん! はい、これ!」
バスタオルを持ってきた姉ちゃん。
咲羅の頭にかける。
乱暴だな……。
「なんかあったかいもの持ってくる!」
またどっかに行く姉ちゃん。
「……アイドルになるってことは……、寮とかに行くの……?」
いや、そんなのわからない……。
逆にアイドルって寮行くの?
「いや、それは――」
「寮に行くってことは……、もうあの学校に行かないの……?」
え、そうなの?
寮行くとあの学校に行かなくなるの……?
――ま、そりゃそっか。
「もう……、天太と会えないの……?」
いや、そんなこと言われてもわからないよ。
しばらく沈黙になった。
すると、またインターホンが聞こえる。
誰だろう……。
俺はドアを開ける。
目の前に実璃がいた。
ずぶ濡れだ。
「え、江島さんから聞きました! アイドルになるんですか!?」
え、なに、あいつ実璃にも言ったの?
なんで?
「天太くん!」
奥から声がする。
ずぶ濡れになりながら湊亜が向かってきてる。
そして、その隣には言音がいる。
こっちもずぶ濡れだ。
全部総一朗のせい?
あいつ、恨んでやろ。
作者が中間考査が近いのでしばらく投稿できません。
こんなキリが悪いところで本当にすみません。
高校最初の中間考査……。