第95話 水族館の帰り
途中から三人称視点になります
「いやー、久しぶりの水族館、楽しかったです!」
まだ元気そうな言音。
もう夕方。
だから今帰り道。
今日の感想、イルカは怖い。
冗談抜きでイルカ恐怖症になるかも。
なんであんなに水かけてくるの?
まぁ、そういうふうに育たれたんだと思うけど。
それより俺にピンポイントで水をかけてきたことが不思議だな……。
「天太さん、どうでしたか? 水族館」
実璃も元気そう。
もう体力ないの俺だけかな?
「まぁ、楽しかった」
「それなら良かったです」
そういえば実璃が水族館って決めてくれたのか。
おかげで変な刺激を受けなくてすんだ。
……いや、ある意味変な刺激受けたけど。
でも遊園地とか行ってたらもっと変な刺激受けてたんだろうな……。
「天太の今日の感想当てるな」
なんかちょっとイケボ出してる総一朗。
隣に湊亜がいるからだと思う。
「『ネコザメかわいい』だろ!」
いや、『イルカ怖い』です。
確かにネコザメはかわいかったけど。
「ねー、ネコザメかわいいよねー」
「あ、湊亜さんもそう思う? 俺もネコザメかわいいと思うんだよね!」
いやいや、お前絶対思ってないだろ。
「……あ、私たちはちょっと寄るところがあるので! ね、柚斗!」
柚斗の右腕にしがみつく言音。
なんか笑顔。
「気持ち悪ぃからやめろ。近づくな」
「女の子にそれは酷すぎない!?」
「誰が女の子だよ」
「私!」
「…………」
「なんで黙るの!?」
やっぱ言音と柚斗のコンビ面白いわ。
「……ま、ちょっと寄るところがあるから。じゃあな」
柚斗はそう言ってどこかに行く。
それを言音が追いかける。
二人でどこに行くんだろう……。
ま、いいや。
どうせ俺に関係ないことだろ。
「天太はなんの魚が好きだったの? 今日見たなかで」
やっと喋ってくれる咲羅。
なんかさっきから喋らなかったからちょっと怖かった。
「ん……。普通に……、ナンヨウハギとか……」
「なんようはぎ? なんだそりゃ」
いや、総一朗、お前も一緒に見ただろ。
「あの青いやつだよ。ちっちゃくて細い」
「ああ、あれね! 湊亜さんがくしゃみしてかわいかったやつか!」
いや、なんでナンヨウハギじゃなくて湊亜のその場面を覚えてんだよ。
イルカよりお前のほうが怖いわ。
「……楽しかったね、柚斗」
「……まぁな」
天太たちとわかれた言音と柚斗。
二人はあるところへと向かっていた。
「なんでついてこようとした?」
「いや、私は柚斗のことなんか考えないでここに来たんだよ?」
「……なんで考えること同じなんだろうな」
ずっと歩いていた二人だったが、やがて止まった。
二人は今、小さい公園の中にいた。
滑り台、ブランコくらいしか遊具がない。
二人はそんな遊具を眺めていた。