第94話 ネコザメ?
「あ、ここだよ、ここ!」
膝辺りまでしかない水槽を見つけた総一朗がはしゃいでる。
あのくらいの水槽に入るってことは、そこまで化け物みたいな大きさじゃないのか。
じゃあかわいい感じかな?
それなら俺も見たい。
「あそこに5匹くらいいるんだって! 天太、行くぞ!」
そこに向かって走るん総一朗。
走ってんじゃねぇよ……。
あと、あの水槽に5匹くらいか……。
水槽はそんなに大きくないし、ってことはネコザメとかいうやつは全然大きくない。
むしろ小さいじゃん。
俺は総一朗を追いかける。
総一朗はしゃがんで水槽の中を見てる。
『うわー! すげー!』みたいなこと言うのかな?
そう思ってたけど、総一朗はなにも言わない。
ただ水槽の中を見つめてる。
「総一朗、どうした?」
俺も水槽の中をのぞく。
綺麗な水だ。
そして、その中にいる生物を見た。
サメみたいなシルエットしてて、茶色っぽい色で、頭の部分がデカい。
それが5匹くらいいる。
……こいつらなんだ?
「おお、久しぶりに見た」
俺の後ろから咲羅が水槽を覗き込む。
「咲羅……、なにこの生物……」
「ネコザメ」
これが?
全然ネコみたいじゃないじゃん。
尻尾ないしーーいや、尻尾はあるか。
ネコに全然似てない。
「触れ合いもできるみたいだぞ? 江島、やんなよ」
柚斗が江島の背を叩く。
「ーーじゃない」
なんかつぶやいてる総一朗。
……なんか嫌な予感するから、耳塞いどこ。
「全然ネコじゃない! ただ頭デケェサメじゃん! かわいくないし! 俺もっとネコちゃんっぽいやつ期待してたんだけど!」
総一朗が叫んでる。
耳塞いどいてよかった。
「かわいいね」
隣から湊亜の声がする。
そこを見ると、湊亜が水槽に手を突っ込んでて、ネコザメの頭を撫でてる。
湊亜にとってはかわいいんだな。
「……うん、そうだね、湊亜さん。ネコザメ、かわいいね」
総一朗が水槽に手を突っ込む。
そしてネコザメの背中を撫でる。
……さっきと真逆のこと言ってんじゃねぇかよ……。
「背びれのトゲに毒があるから気をつけてくださいね?」
実璃が総一朗の隣で水槽をのぞきながら言ってる。
背びれに毒がある……?
総一朗、今背中触ってるよな……。
ま、大丈夫だろ。
総一朗、意外と生命力あるし。
俺も触ってみよ。
俺は水槽に右手を突っ込んで、ネコザメの頭を触ってみる。
ザラザラしてる。
でもネコザメは大人しくて、全然動かない。
……確かにかわいいな。
ネコザメって美味しいんですかね……?