第93話 イルカショー、終わり
イルカショーは30分くらいあった。
感想、もう二度とイルカショーは見に行かない。
めっちゃ濡れた。
奇跡的に財布だけ濡れなかった。
「いやー、木神先輩、すんごく濡れてますね!」
言音はあんまり濡れてない。
いや、俺以外のやつはあんまり濡れてない。
強いて言うなら総一朗はまぁまぁ濡れてる。
「俺さ……、今日ずっとこれ……?」
「心配しなくても大丈夫ですよ! 濡れてる木神先輩もかっこいいですから!」
「濡れてるとかっこよくなるの?」
「めっちゃかっこいい」
即答する咲羅。
そうなんだ……。
じゃあ総一朗のやつ、水かければいいじゃん。
めっちゃモテるだろうな……、そうすれば。
「――あの、すみませんでした!」
突然知らない男の人が俺の前まで来て頭を下げる。
服装からしてスタッフさんかな?
「えっと……」
「お客様に大量にお水をかけてしまって……!」
「はぁ……、まぁ、財布とかは濡れてないんで大丈夫ですけど……」
「いえ、それでは気が済みません! ご同行、お願いできますか?」
なにその警察官が言いそうなやつ。
令状出したあととか言うよね?
ドラマとか小説だけなのかな?
現実で言ってるのは見たことないけど。
ここで断るのはなんか嫌だから一緒に行くか。
「――お待たせ……」
俺はドアを開けてから言う。
すぐ目の前にはみんながいる。
俺はスタッフルームにいた。
そして、服を無料でもらった。
イルカの描いてある黒いTシャツ。
それに黒色の半ズボン。
半ズボンなんてめっちゃ久しぶりに来たな……。
しかも上も下も黒い。
俺がもともと来ていた服は家に送ってくれるらしい。
ありがたい……。
「天太くん……、なんか黒いね」
「俺が選んだわけじゃない」
「お前……、イルカなんて似合わねぇな。江島はどう思う?」
「認めたくないけど、天太はなにを着ても似合う」
「それは江島さんに同感です」
いや、なに着ても似合う人間なんていないと思うけどな……。
ま、白色なんかより黒色のほうがいいからいっか。
「このあとどこ行く?」
「あ、俺サメ見たい! なんか『ネコザメ』っていうサメがいるみたい! 湊亜さんは見たい?」
「え、まぁ……」
「よし! じゃあ行くか!」
総一朗が歩き出す。
勝手に決めんなよ……。
ってか、『ネコザメ』ってなに?
ネコなの?
ネコみたいなサメなの?
尻尾とか耳とか生えてんのかな?
なんかかわいい名前だから、きっとかわいいやつだろ。
期待しとこ。
イルカショーのネタが思いつきませんでした……