第88話 答案返却日
答案返却日。
特に変な点数は取らなかった。
総一朗は数学だけ赤点。
で、公民とかは満点とりやがった。
文系だけは得意んだよな、あいつ。
俺は今日、咲羅に呼ばれた。
しかも屋上に。
屋上に着いた。
やっぱ独りで屋上に行くっていいな。
「――天太」
前から声がする。
顔を上げると咲羅がいた。
なんで前にいるのに気づかなかったんだろう……。
もっと前見なきゃな。
俺は咲羅に近づく。
「来てくれてありがとう」
「ああ、で、どうした?」
俺が訊くと、咲羅はうつむく。
そしてため息をついた。
……俺なんかしたっけ?
咲羅になんかした?
なんもしてない気がする……。
「――ありがとうございます、白糸さん」
後ろから聞きたくない声。
振り向きたくないけど振り向く。
名取真央がいた。
ってか名取真央、咲羅に礼を言った……?
「木神天太さん、夜泉さんとの関係はどうですか?」
「なんで湊亜が出てくる? お前と湊亜は関係ねぇだろ」
「ま、それは白糸さんから聞いてください」
待って、頭が追いつかない。
なんで咲羅?
「咲羅……、全然話がわからないんだけど……」
「…………」
黙る咲羅。
まさか……、咲羅が名取真央に力を貸した……?
「木神天太さん、もうわかったでしょう。あなたは――」
「やっぱり面白いね、人を騙すって」
咲羅?
急に笑い出す咲羅。
マジでなにが起こってるの?
「本当そうですね、まさかあなたが木神天太さんを騙すとは――」
「バッカじゃないの? 天太には言ってないよ!」
……?
「名取、アンタに言ってんだよ!」
咲羅は裾をまくって、両腕を名取真央に見せる。
切り傷が大量にあった。
「散々人を騙しといてどう? 今度はアンタが騙された! ま、海川や言音よりかは全然軽いもんだけどね!」
海川……?
なんで海川柚斗と言音が出てくる?
ってか、急展開すぎる……。
「……失望しました」
名取真央はそう言って屋上から出ていった。
なんだったんだ……。
「ごめんね、天太。変なことに使っちゃって」
「いや、それは別にいいけど――」
「サンキュな、白糸」
近くから海川柚斗の声がした。
声が聞こえてきた方向を見ると、そこには海川柚斗と言音がいた。
二人ともニッコリしてる。
「二人とも満足した? ……って、夜泉湊亜は?」
「ここ……」
海川柚斗の後ろからひょこっと出てくる湊亜。
隠れるの上手いな……。
「白糸さん……、本当によかったの……? 確かに私、天太くんとばっかり話してて白糸さんが――」
「いいって、全然気にしてないし。聞いてたでしょ? ま、ちょっとは面白くなかったけどね」
咲羅は袖を伸ばして腕を隠す。
そして湊亜に手を差し伸べる。
「これからよろしく、湊亜」
「……うん、よろしく」
湊亜は咲羅の手を握る。
そのときの湊亜の顔はとても嬉しそうだった。
……感動的なシーンなのに、こんなこと思ってごめん。
話が全然追いつかない。
みんななんの話してるの?
なんで名取真央と咲羅がいた?
そしてなんでこのメンツ?
しかも急展開すぎる!
※夏服のYシャツって半袖のやつと長袖のやつ、両方ありますよね……?
あと次回に今回の説明します