第83話 転入生が来た
気がついたら2週間が経ってた。
あれから毎日言音と登校した。
もちろん咲羅と実璃とも登校した。
そして、なぜか今日、みんなそわそわしてる。
総一朗なんて気持ち悪いくらい興奮してる。
「なぁ、総一朗……」
「にゃんだ?」
鼻の下伸ばしてる総一朗。
言い方も声も、あまり気持ちの良いものじゃない。
「なんでみんな興奮してんだ?」
「忘れたのか!? 今日は転入生が来るんだぞ!」
転入生……?
……そういえば総一朗、そんなこと言ってたな。
確か女だったよな?
だからみんな――特に総一朗のやつ興奮してるのか。
「そろそろ朝礼だ! 来るぞ!」
確かにそろそろ朝礼だ。
さてと、どんな人かな。
「――みんな知ってると思いますけど、今日は転入生がいます。――入ってきて」
先生が教室のドアに向かって言う。
総一朗がめっちゃそわそわしてる。
ドアがゆっくりと開く。
赤茶色っぽい髪のツインテールの女子生徒が入ってきた。
結構顔は整ってる。
これは総一朗が興奮するわ……。
「自己紹介、お願い」
先生がその女子生徒に言う。
すると、女子生徒は白色のチョークを持って黒板に文字を書く。
『夜泉湊亜』って書いてる。
その上には『やいずそあ』ってふりがなを書いてくれてる。
『そあ』か……。
聞いたことない名前だな……。
しかもあれで『夜泉湊亜』って読むのか……。
「はじめまして、夜泉湊亜です」
結構かわいい声。
男子全員がガン見してる。
これはモテモテになるな……。
――いや、海川柚斗はガン見してない。
「えっと……、この学校のことはなにも知らないので、教えてくれたら嬉しいです。これからよろしくお願いします」
「はいはい! 質問! 好きな食べ物は!?」
男子生徒が勝手に言ってる。
「キャラメル……、かな……?」
「あ、俺も好き! この前さ――」
「はいはい、それはあとで。夜泉さん、あの席に座ってくれる?」
先生が男子生徒野声を遮って言う。
そして、空いてる席を指差した。
俺の席より後ろだ。
真後ろじゃないけど。
だから、夜泉湊亜っていう女子生徒は俺の隣を通った。
そのとき、一瞬だけ目が合った。
向こうは微笑む。
うん、咲羅並にかわいいわ。
朝礼が終わった。
男子生徒が早速夜泉湊亜に近づく。
俺は別に興味ないから、授業の準備をして待ってよ……。
俺が机の中から教科書を出してると、誰かが俺に近づいてきた。
夜泉湊亜だ。
「こんにちは」
「あ、ああ……、こんにちは……」
「ちょっと時間、大丈夫?」
「ああ」
「あのさ、よかったらでいいんだけど――」
「――学校、案内してくれない?」