第81話 部活の帰り道
あー、疲れた。
やっと部活終わった。
部活って7時まであるんだ……。
いつも5時には家に帰ってるのに……。
「きーがみ先輩!」
独りで歩いてると後ろから女の声がする。
振り向くと、予想通り言音がいた。
「独りで帰るんですか?」
「ああ、独りで帰る」
「野尻先輩とかと一緒に帰らないんですか?」
「会ったばっかの人とそんな距離になれるわけねぇだろ……」
「そうですか?」
「俺はお前と違って陽キャじゃねぇんだよ」
「……ま、それならそれでいいですけど」
言音は俺と歩幅を合わせて、俺たちは並んで歩いてる。
「木神先輩ってなんで行事管理部に入ろうと思ったんですが?」
「なんか楽そうだから」
「結構不人気なんですよねー、モテないから。みんなサッカー部とかバスケ部、ダンス部なんかに入っちゃって……」
「モテる目的で部活に入るのかよ……」
「高校生なんでね! みんな恋人がほしいんですよ! 逆に木神先輩は恋人ほしくないんですか?」
「そんなの考えたことねぇからな……」
ちょっと前まで嫌われてたからな、俺。
学校で家の態度とっただけなのに、なんでこうなるかな……?
「木神先輩って不思議ですよね」
なにが?
なにが不思議なの?
「木神先輩って転入生じゃありませんよね?」
「ああ」
「じゃあなんで急に人気になったんですかね。私が入学して1か月くらいは、木神先輩の噂なんて聞きませんでしたよ? それなのに今はずっと木神先輩の噂を聞きます。なんで急にそうなるのかなぁ……?」
それは俺が嫌われてたからだよ。
ってか、俺の噂ってあるんだ。
1年生まで広まってるんだ。
「にしても、本当にかっこいいな……」
俺の顔面をジロジロ見る言音。
「想像以上にイケメンですね! これじゃみんなからお弁当をもらうわけだ!」
「知ってるのか? 俺が女子から大量の弁当もらってるの」
「はい! しかもそれを全部食べてるんですよね! すごいですね!」
「無理して食ってるけどな」
「噂では、白糸先輩と付き合ってるとか!」
「……は?」
なんで咲羅と俺が?
「付き合ってるわけねぇだろ……」
「ええ……、お似合いなのに……。あと名取先輩にも好かれてるみたいですね」
「本当いい迷惑だよ」
「嫌いなんですか? 名取先輩のこと」
「ああ、大嫌い」
「私と同じですね」
え……、言音も名取のこと嫌いなのか……?
「……! そうだ! 連絡先交換しましょうよ!」
ポケットからスマホを出す言音。
また新しい人とメール繋げる……。
えっと……、今繋いでる人は……。
『母さん、父さん、姉ちゃん、咲羅、実璃、総一朗』。
7人目だ!
目指せ10人!
ありがとうな、言音。