第79話 とても大切なことを忘れていた
俺は大切なことを忘れていた。
一つ目が、お礼を言うこと。
誰に言うかって?
総一朗。
あいつ、体育祭のリレーで俺を勝たせるために転んでくれた。
だから怪我してる。
二つ目が、部活に入ること。
まだ部活に入っていない。
とりあえず、先に総一朗に礼言うか。
ちょうど今、あいつは本を読んでる。
『モテるためには!!』って本。
「なぁ、総一朗」
「なんだ? いい女でも紹介してくれるのか?」
総一朗は本から目をはなし、俺を見る。
「ありがとな、体育祭のときは。お前のおかげで、咲羅が元気になってくれた」
「性格が変わったのか?」
「変わったっていうか……。まぁ、変わった」
「どんな感じ?」
「なんかツンデレになった」
「ツンデレ? もともとツンデレなんじゃないのか?」
もともとツンデレ……。
いや、今の咲羅は昔の咲羅だからな……。
だからもともとツンデレなんだよな?
「いや、なんというか……」
「説明が難しそうならいいよ、俺難しい話なんて聞きたくないし。その代わり!」
総一朗が急に立ち上がって俺の顔面に指を差す。
「咲羅さんを絶対に幸せにしろよ!」
「んなこと言われても……。しかもなんだよその言い方。まるで『結婚する人』みたいな感じになってんじゃん」
「結婚するんじゃないのか? お前咲羅さんに『好き』って伝えたんだろ?」
「告白なんてしてねぇよ……」
「したんじゃないのか? 屋上で。『好きだからこそやんねぇんだよ!』みたいなこと言って」
んなこと言うわけ――
――いや、待てよ……?
……言った! 確かに言った!
「……って、なんでお前がそれ知ってるんだよ! 俺お前に言ってないよな!?」
「聞いたぞ、名取真央から」
なんであいつ、総一朗にそのこと話すんだよ……。
「――あ、そうそう。今度転入生くるらしいぞ」
総一朗がイスに座ったときに言った。
「転入生? いつだ?」
「あと2週間くらい先だ」
「結構先だな。転入生なんて、初めてだよな?」
「そうだな。そしてなにより! その転入生が女らしい!」
「あ、それはどうでもいい」
「どうでもよくないだろ! 男子高校生はな、みんな女が大好きなんだよ! 本当は天太も女の子大好きなくせに!」
「もともと人間みんな嫌いだったからな……。んなこと言われても……。しかも、別に女のことが好きじゃない男なんてたくさんいるだろ」
「あー、もういいや。お前みたいにモテモテのやつはそういう思考なんだ」
えー……。
俺なんか変なこと言ってるわけじゃないと思うんだけど……。
追記……あ、次回新キャラクター出ます