第78話 ツンデレになった
「なんか今日の咲羅さん、変わってますね」
休み時間。
大量の弁当食い終わったら実璃が言ってきた。
今は二人きり。
「なんか……、典型的な『ツンデレ』になってますね」
「俺が『本当の自分を表現しろ』って言ったからな。……それにしてもすごいよな。あの噂本当だったんだな、『白糸咲羅はツンデレ』ってやつ」
「そうですよね……。ツンデレって結構『べ、別にあなたのためじゃないから!』とか言うイメージがあるんですけど、特にそういう発言はなかったですね」
いや、あったぞ?
今朝言われたぞ?
『天太も年頃だから素直になれないんだよね?』みたいなこと言われたよ?
最初は『お前と一緒に行きたくない』みたいな感じだったのに。
あ、あと――
「俺のことすんげぇ心配したな、名取の話になると。その前までは結構ツンってしてきてたのに」
「……名取になにかされたんですか?」
なんで実璃、そこに注目する?
俺は『咲羅が俺のことになると急に態度変えた』ってことを伝えたかったんだけど……。
「いや、何もされてない」
「本当ですか? 天太さん、すぐ物事隠そうですし」
そんな?
そんなに隠さないぞ?
「……あ、でも演技力ないから隠してもバレますけどね、天太さんの場合」
え、『演技力ない』……?
俺めっちゃ演技力あるほうだぞ!
でも、実璃に一瞬でバレた気がする。
実璃と出会ってばっかのとき、実璃も弁当つくってくれて『迷惑?』みたいな感じで訊かれたな……。
……あ、あのときは本当に迷惑なんて思ってなかったからね?
「私に対してすんごいツンって態度してくるんですよね、咲羅さん」
「急に変わるとビビるよな」
「でも決して悪い言葉遣いはしてませんよね」
「まぁ、そこが咲羅の優しさだからな」
「……天太さんって、咲羅さんと付き合ってるんですか?」
なんで急にその質問?
今の流れ的に『咲羅の態度が変わった』って感じだったじゃん。
なんで俺と咲羅の恋愛のことになった?
「いや、付き合ってなんかないぞ?」
「へー、意外ですね」
なんで?
どこが意外?
「……でも、天太さんって誰かと付き合ってるわけじゃないですよね」
「ああ、そうだな」
「そういうのは考えないんですか? 一応もう高校生ですし」
「んー……。考えることなんてできなかったからな。みんな俺のこと認めてくれなかったから」
「……すみません」
「謝んな。もう過ぎたことだし、今はたくさん味方いるし。それになんでお前が謝るんだ? お前はなんもしてねぇだろ」
俺は実璃の頭に手を乗せる。
「でも、ありがとな。お前のおかげで今、めっちゃ楽しい」
「……だからモテるんですよ……」
実璃、なんか言った?
ま、いいや。
「あー! 木神くんと実璃が二人きり!」
向こうの方で女子たちがなんかギャアギャア言ってる。
このあとヤバイことになりそうだな……。