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第72話 腕を隠した

 落ち着く。

 ここ落ち着く。


 今どこにいるかって?


 トイレ。


 そろそろ俺たちの『リレー』になるから、トイレに行っといた。

 今みんな、3年生の試合を見てる。


 だから誰もトイレにいない。

 静かでいい。


 こういう場所って落ち着くよね。


 俺は用を済ませて、外に出た。

 それと同時に、隣の女子トイレから誰かが出てくる。


 咲羅だ。


 「よ、咲羅」

 「えっ、天太!」


 とっさに両腕を背中で隠す咲羅。

 今の咲羅は腕まくりをしてる。


 今の咲羅はジャージを着ている。


 ってか、何を隠したんだ?


 「あ、天太もお手洗い?」

 「ああ、そうだけど……」

 「そっかそっか。じゃ、早く行こ!」


 俺に両腕を隠しながら前に進む咲羅。

 なんかめっちゃ気になる。


 でも見せてくれそうにない。

 よし、見よう!


 俺は咲羅の前を歩く。

 そして、わざとポケットに入れてあるハンカチを落とす。


 咲羅はそれを拾おうとする。


 今だ!


 俺は急いで咲羅の後ろに回り込む。

 咲羅は腕を隠そうとする。


 咲羅はジャージで腕を隠した。

 でも、その前に俺は咲羅の腕を見てしまった。


 傷だらけだった……?


 俺の咲羅の右腕を掴んで、ジャージをまくる。


 咲羅の右腕は切り傷が大量にあった。

 古いものから新しいものまで、たくさんあった。


 今、血が流れそうなものもある。


 「見ないで!」


 咲羅は俺を押す。

 俺は咲羅の腕を放してしまった。


 咲羅はジャージで腕を隠す。


 「咲羅……お前……、なんだ……? 今の……」

 「あ、天太には関係ない!」


 急に怒鳴る咲羅。

 今にも泣きそうな目をしている。


 なんて反応すればいいんだ……?

 いや、変な反応なんてしなくていい。


 俺が思ったとおりに反応しよう。


 「傷……か……?」

 「……違う……」

 「じゃあ見せろ。傷じゃねぇんだろ?」

 「……嫌だ……」


 絶対傷じゃん、あれ。

 なんか事情聞いたほうがいいやつかな?


 『相談したいけど相談できなくて苦しんでる』みたいなやつな気がする。


 「なんで見せてくれないんだ?」

 「見られたくないの……」


 これは咲羅の口から聞くのは無理そうだな。

 じゃあ揺さぶってみるか。


 それで咲羅の反応が大きかったやつが、きっと理由だ。


 一番可能性が高いのは――


 「――リストカットか?」

 「!」


 咲羅が大げさと思えるくらい反応する。

 絶対これだ。


 「ちが――」

 「そうだろ? さっきトイレでやったのか?」

 「…………」

 「確かに咲羅のことだから俺が口出していいわけじゃないと思う。でも自傷行為だけはダメだ」


 俺が言い終わると、咲羅はポケットに手をいれる。

 そして、そこからシャーペンを出した。


 今見ると、咲羅は泣いていた。


 「天太……、これしかないんだよ――」


 「――ストレス発散の……、方法……」

……(急展開)……

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