第67話 『大玉転がし』の結果
大玉転がしの結果。
白組が1位。
なぜか俺の行為は反則にならなかった。
今考えると、よくあれが反則にならなかったな……。
俺たちがやったのって『大玉転がし』だよね?
転がしてないじゃん、あれ。
ほぼ投げてたじゃん。
「天太……、マジでやったんだ……」
気づけば姉ちゃんが前にいた。
「姉ちゃん? なんでここにいるんだよ。生徒しかいちゃいけないんだぞ?」
「いや、ここ保護者席ですから」
え? そうなの?
辺りを見渡すと、確かに俺は保護者席にいた。
なんで俺、ここにいるんだ……?
「ボーッとして歩きすぎだよ。ちゃんとして歩かなきゃ危ないよ?」
「ああ……、そうだな……」
「で、マジでやったんだね」
「なにを?」
「ボール蹴るの」
ああ、あれか。
「冗談で言ったつもりなのに……」
「インドア陰キャでコミュ障の俺に冗談が通じると思うな」
「反則になるかと思ったよ」
普通反則になると思うよ?
ただ今回だけがおかしいだけだったと思う。
「あっ、天太のお姉さん……」
後ろから咲羅の声。
『振り返ろう』と思う前に、身体が勝手に後ろを見る。
汗まみれの咲羅がいた。
「咲羅ちゃんじゃん」
「おお、咲羅、どうした?」
「いや、天太どこにいったのかなって……」
「よかっじゃん、天太。とうとう探される存在になったよ?」
「本当によかったよ。昔と変われて」
「……昔……?」
咲羅?
なんで『昔』って単語に反応した?
「……変わっちゃうよね……、どうしても……」
え、なになに?
「戻りたいな……、『昔』に……」
急にどうした!?
咲羅がおかしくなった!
急に意味深なこと言い始めた!
ヤバイ!
「……! ご、ごめん! 変なの考えてた!」
いつものように戻る咲羅。
『変なの』ってなんだろう……。
「……天太、ここじゃなくて向こうに行きな? ここだと人いっぱいいるし、暑苦しいし」
姉ちゃんが生徒席を指差す。
……姉ちゃん、気遣いありがとう。
「行こうぜ、咲羅」
「うん……」
俺は咲羅の手を掴んで生徒席に向かう。
……あそこ、白組のとこだけど別にいっか。
咲羅まもさっきここに来てたし。
「――ま、まぁ、赤組には勝ったな」
「うん、名取が実璃になんか言ってたけど」
「心理戦で挑もうとしてたんだと思う。なんか変なこと言って、実璃の心を乱そうとしたのかもな。意味なかったけど」
「実璃、速かったよね」
少しは元気が出た咲羅。
やっぱ元気が一番だな。