第6話 路地裏
「――ここ!」
とある路地裏で白糸咲羅は止まる。
さっきの女子生徒たちは途中まで追ってきたが、追うのを諦めたらしい。
そして俺はめっちゃ疲れた。
普段運動なんてしないから。
走るのなんて久しぶり――いや、ついこの前走ったな……学校で。
「木神……! 早く……スマホ……出しなさい……!」
白糸咲羅も疲れてるらしい。
そんなに俺と二人だけでメール繋ぎたいか……?
とりあえず俺はスマホを出す。
それを見た白糸咲羅は目を輝かせ、自分もスマホを出す。
俺はメールのアプリを開く。
……ああ、メール繋いでる人が少ない……。
母さん、父さん、姉ちゃん、総一朗、4人しか繋いでない……。
悲しいな……。
白糸咲羅のスマホをチラッと見る。
……めちゃくちゃ繋いでる人多いじゃん……メール……。
これが陽キャと陰キャの差か……。
「早く繋げるよ! 誰か来るかもしれないし!」
「いや、別に誰か来ても――」
「いいから!」
白糸咲羅が急かすので、俺は黙って白糸咲羅とメールを繋ぐ。
これで5人目だ……。
「よし……」
「えっと……俺もう帰っていい感じ……?」
「……は? ゲーセンとか行くんじゃないの?」
……は? ゲーセン……?
「毎日行ってんじゃないの?」
いや、行ってませんけど!?
そもそもゲーセンなんてめったに行かないし!
「なんで俺がゲーセン行くんだよ……」
「噂になってるよ? 『木神が放課後、毎日ゲーセンでプリクラとってる人たちを盗撮してる』って」
どんな噂だよ……。
ってかそんな理由のためだけにゲーセン行ってることになってるの……?
誰だよ……そんな噂つくったの……!
「……やっぱり行ってない?」
「行ってるわけねぇだろ……」
「へー……じゃあこれから帰るんだ」
「ああ」
「…………」
え、なんで黙り込むの?
俺なんか悪いこと言った……?
「じゃあ、どうせ私も帰る人間いないんだし、一緒に帰ろ」
一緒に帰るのか……。
まぁ、あの女子生徒たちと比べたら全然いいけど……。
登校も下校も一緒か……。
明日変な噂できそうだな……。
「……あいつら、本当にムカつくよね」
突然喋りだす白糸咲羅。
「急に態度変えやがって。自分たちが何してきたかわかってないのかな?」
もしかして……あの女子生徒たちのグチ……?
確かにそう思うけど……。
「木神も、なんで顔隠してたの? 声まで変えて……。あんな声出したら、当然いじめられるよ」
……理由か……。
「……それは……言えない……」
「……そっか、じゃあ帰ろ」
俺たちは同時に路地裏から出た。