第55話 咲羅と姉ちゃん
「じゃ、ゆっくりしていってねー!」
姉ちゃんが咲羅と実璃に言う。
そしてリビングから出ていった。
なんか本当に咲羅が姉ちゃんに会いたいらしくて、早速今日会うことになった。
姉ちゃんも今日休みだし、特に予定もないから家に上がらせた。
「ねぇ、お母さん! 天太が女の子家につれてきた! 女の子だよ!」
向こうの部屋から姉ちゃんの声がめっちゃ響く。
多分母さんに電話してる。
大げさすぎるな……。
「……天太のクラス、もう決めた?」
咲羅がいつも通りの口調で訊いてくる。
咲羅にはあの姉ちゃんの声が聞こえないのか……?
「決めたって……何を?」
「体育祭の出し物。うちの組はもう決めたけど」
体育祭か……。
決めてないな……。
ってかそもそも俺が何組かもわからないし。
みんな『去年と同じように組をわける』って言ってるけど、その『去年』がわからない人はどうすればいいんだろう……。
「いや、決めてない」
「……ところで天太さん、入部届はもらってきましたか?」
……!
あ! 入部届!
もらい忘れた!
「その表情からすると、忘れたみたいだね」
「なんかすぐ忘れちまうんだよ……」
「私がもらってきましょうか?」
「さすがにそれは申し訳ない」
「アイス食べる?」
突然リビングに入ってくる姉ちゃん。
めっちゃ興奮してる。
母さんとの電話はもう終わったのかな?
「あ、アイスですか!?」
まぁ、そりゃ実璃は反応するよな。
「うん、いっぱいあるから! 余るくらいあるから、むしろ食べて!」
「そ、それではいただきます……」
「咲羅ちゃん……だっけ? 咲羅ちゃんも食べる?」
「え、私ですか!? ……じゃ、じゃあ……迷惑じゃないなら……」
姉ちゃん、よく咲羅の名前知ってるな。
教えたっけ?
「ってか天太のお姉さん、本当にかわいいね」
「そうか?」
「木神家はみんな顔面偏差値高いんですね」
「…………」
なんて言えばいいかわからないからとりあえず黙る。
あと顔面偏差値ってなに?
聞いたことはあるけど、意味はわからない。
『顔面の偏差値』?
よくわからん。
「はい、持ってきたよ!」
姉ちゃんがアイスを3つ持ってきた。
実璃が俺に食わせてくれたアイスキャンディーだ。
姉ちゃんも気に入ったのかな?
「! これは……!」
「あ、実璃ちゃん好き? このアイス」
「は、はい! 大好きです!」
「天太のことも好き?」
「はい! 大好きです!」
何を言ってんだ、こいつら。
ま、とりあえず食べよ。