第54話 昨日はどうだった?
「どうだった? 昨日は」
登校中。
咲羅と実璃と登校してる。
そのとき咲羅が訊いてきた。
「昨日?」
「名取に呼ばれたんでしょ? 家に」
よく知ってるな……。
「ああ」
「変なことされなかった?」
「なんか誘惑された。ベッドに寝ろとか」
「え、あ、ベ、ベッド!?」
実璃が結構大げさに反応してる。
いや、これが普通の反応かな?
「そ、それで一晩過ごしたんですか!?」
「いや、すぐ帰った。本当、何考えてんだろうな」
「監視カメラでも仕掛けてたんじゃない? それで、録画したやつを拡散するんじゃない?」
咲羅もそう思うか……。
今となっては海川柚斗の『名取のペースにのまれるな』の意味がよくわかる。
確かに名取のペースにのまれたら、一撃でヤバイことになるな……。
「それにしても、名取の覚悟もすごいね。もしそれで天太が名取の誘惑に負けてたら、名取は自分の身体を犠牲にするってことでしょ?」
「やっぱり女は無理なのか? 自分の身体を犠牲にするの」
「む、無理ですよ! 逆に男の人はそういうのできるんですか!?」
「いや、それも無理だと思うけど……」
「そもそも天太、女の子に慣れてないよね?」
女の子、か……。
確かに、高校に入ってからは苦手になったな……。
中学のときは大丈夫だったのにな……。
「……あ、でも! 俺姉ちゃんいるし! 女には慣れてると思うぞ!」
「え、天太、お姉ちゃんいるの?」
「知らなかったんですか?」
驚く咲羅と、あんまり驚かない実璃。
あれ? 咲羅に言ってなかったっけ?
実璃は会ったことあるけど。
「すっごく、美人ですよ!」
「え、なにそれ! 見てみたいんだけど! どういうふうに美人なの!?」
「どちらかというと、かわいい系ですね! クール系ではなく!」
「え、マジで見たいんだけど!」
そんなに?
俺の姉ちゃん?
ってか実璃、俺の姉ちゃんのことそう思ってたのか。
『クール系』じゃなくて『かわいい系』か……。
確かにクール系ではないな、姉ちゃんは。
「あ、天太! 今度会わせてね!」
「い、いいけど……」
「よしっ! じゃ、学校行くよ!」
姉ちゃんの話でこんなに盛り上がるんだ。
名取の話題だったのに、姉ちゃんの話題になった瞬間にこんなに変わるのか。
名取より俺の姉ちゃんの方が興味あるのか。
よかったな姉ちゃん。
姉ちゃん、俺の友達にめっちゃ人気だよ。
大学で人気あるかはわかんないけど。