第51話 化けの皮が剥がれる?
「アイス食うか?」
俺は冷蔵庫から取ってきた二つのアイスキャンディーを実璃に向ける。
「え、いや、そんな……」
「お前のオススメなんだろ? 一緒に食おうぜ」
そう、このアイスキャンディーは実璃のオススメ。
咲羅の前で俺が『好き』とか言って落ち込んでたとき、実璃がくれたやつ。
結構気に入ってたから買ってた。
「では……、いただきます」
実璃は俺からアイス一つを受け取り、ゆっくりと袋を開ける。
俺はそれを見てから、自分の分のやつも袋を開ける。
そして食べる。
うん、美味い。
「ありがとうございます。美味しいです」
「だな。……で、何が話したいんだ?」
「はい。実は、名取真央のことなんですけど」
! 名取!
海川柚斗といい実璃といい、今日は名取の話ばっかだな。
ってか実璃が『さん』をつけないなんて、よっぽど名取のこと嫌いなのかな?
俺も嫌いだけど。
「また名取がなんかしたのか?」
「はい、実はさっきメールが来て……」
実璃はアイスを口にくわえて、空いた手でポケットからスマホを出した。
そして画面を少し操作して、俺に画面を見せる。
メールの画面で、左上には『名取』って文字があった。
なんか色々会話してる。
「読んでみてください」
じゃあ読むわ。
最初は名取から話しかけられている。
『こんにちは、鶴崎さん』
『勝手に追加したんですか? 別にいいですけど』
『はい、少し忠告したいことがあるんです。これ以上木神天太さんに関わらないほうがいいですよ。最悪の場合、高校退学になりますよ?』
『天太さんが退学になるようなことでもしたんですか?』
『はい。いつか化けの皮が剥がれるんです』
そこで会話が終わっていた。
感想、普通にひどい。
『化けの皮が剥がれる』って書いてあったぞ……。
俺なんもしてないのに……。
「天太さん、何かしたんですか?」
「退学になるようなことなんてしてねぇよ。逆に何したら退学になれるんだよ」
「まぁ、それなら大丈夫なんですけど……」
「心配になって来てくれたのか?」
実璃は静かにうなずく。
わざわざ来てくれたのか……。
「ありがとな、わざわざ」
「いえ、心配だったので……」
「でもさ、メールでも言えたよね?」
俺の言葉に固まる実璃。
表情も変えてない。
俺の声聞こえたのかな?
「こんな夜に女一人で歩くのは危ないと思うぞ?」
「そうですね……、なんで思いつかなかったんですかね……」
「ま、まぁ、来てくれてありがとな。名取には注意しとくよ」
そのあと数分だけ雑談してから、実璃は俺の家から出ていった。
『送るぞ?』って言っても『大丈夫です』って言われた。
そろそろ名取も本格的に絡んで来そうだな……。