第50話 海川柚斗から電話
「天太、これいる?」
夕飯食い終わって、食器片付けてるときに姉ちゃんが話しかけてくる。
姉ちゃんの手には千円札。
「え、千円? なんで千円?」
「天太も大変になってきたでしょ? せめてこれでなんかお菓子でも買って食べな?」
「嬉しいけど……、急にどうした?」
「天太最近疲れてそうな顔してるし」
よく気づいたな。
「いや、いいよ。小遣いもまだあるし。普段使わねぇから。んなことより姉ちゃんが使えよ。ビールでも買うんじゃねぇのか?」
「私はお酒飲まないよ?」
「もう20歳なのに?」
「なんかお母さんみたいになりそうで怖いから」
知ってると思うけど、母さんは酔うとヤバくなる。
普段は一般的な母親なのに、酒呑んだ瞬間人が変わる。
「天太に使ってほしいな、これ。とりあえず、はい」
姉ちゃんは俺に千円札を強引に渡し、自分の部屋へと歩いていった。
リビングに残ったのは俺とミミ。
……あ、『ミミ』って覚えてる?
ネコだよ?
そんなとき、俺のスマホが震える。
海川柚斗から電話がかかってきていた。
今ちょうどここには俺とミミしかいないし、ここで話すか。
『今、時間大丈夫か?』
「ああ」
『名取のことでお前にしてほしいことがある』
「何をすればいいんだ?」
『まず一つ。名取はお前のことを狙ってる』
狙ってるか……。
そういえば実璃がなんか言ってたな。
『木神天太を私のものにする』みたいなやつだった気がする。
「それは知ってる。俺に好きになってほしいみたいだな」
『ああ。それに関してお前はどう思うんだ? 名取を好きになるつもりか?』
「んなわけねぇだろ」
『ならよかった。それでお前にしてほしいことは、ただ名取のペースに巻き込まれないでほしい。それだけだ』
「名取のペース?」
『ああ、アイツは積極的にお前に近づく。そしてお前に色々な行動をしてくる。それに飲み込まれるな』
……?
どういうこと?
名取の行動?
『じゃ、頼んだ』
いやいや、ちょっと待ってよ。
何か言おうとしたとき、海川柚斗はすでに電話を切っていた。
ペースに巻き込まれるな?
まぁ、今まで通りやってればいっか。
「天太ー! お客さんだよー!」
玄関から姉ちゃんの声。
玄関まで行くと、姉ちゃんがいた。
……当たり前か。
それより驚いたのは、そこには実璃もいたということだ。
「? 実璃?」
「あ、天太さん……」
実璃は小さい声で言う。
俺と初めて会ったときと同じくらい小さい声。
「どうした? こんな夜に」
「少しお話したいかとが……」
「じゃあここじゃなくてもっと奥で話しな? 立ちながら話すのもあれでしょ?」
姉ちゃん、ナイス提案。
「いえ、そんな……」
「いや、いいよ。上がんな?」
俺が言うと、実璃は申し訳無さそうな顔をしながら靴を脱ぐ。
そして俺の部屋に連れて行った。
元日でも投稿する、それくらいすることがない中学3年生です(勉強しろ)