第49話 入部したい
「…………」
職員室のドアの前でかたまる俺。
俺の入る予定の部活の顧問――安藤先生に話さなくてはならない。
でも話せない。
だってなんて言ったらいいかわからないから!
職員室ってどうやって入るの!?
ノックって何回!?
2回だっけ!?
じゃあその次どうする!?
なんて言えばいいの!?
「……何してるの?」
後ろから声。
振り向くと、そこには咲羅がいた。
「咲羅……! 職員室の入り方教えてくれ!」
「え……、職員室の入り方……?」
「ああ!」
「普通に入ればいいだけだよ。ノックしてドア開けて、名乗って、どの先生に用があるか言えばいいんだよ?」
! そっか!
じゃあ状況をイメージしてみよう!
「失礼します」
ドアを開けて、堂々と職員室に入る俺。
先生たちが俺のことを『立派な生徒だ』と思う。
「木神天太です。安藤先生に用があります」
「あ、はい!」
ハキハキと喋る俺。
せっせと俺の前まで来る安藤先生。
「部活に入れてください」
……よし、できる。
俺は覚悟を決め、職員室のドアを開ける。
よし、言うぞ。
「きがみ――」
「ノックくらいしろよ!」
俺の声を遮って、目の前にいる中年の男が怒鳴る。
……この先生、名前なんだっけ……?
「入るときはノックしろ!」
「あ、はい!」
俺はドアを閉める。
そしてもう一度ドアを開ける。
「きがみ――」
「だからノックしろって!」
あ、ヤベ!
またノック忘れた!
俺はもう一度ドアを閉める。
そしてノックをし、もう一度ドアを開ける。
「きがみ――」
「最初は『失礼します』だろ!」
あ、これも忘れた!
俺はドアを閉め、ノックをしてドアを開ける。
「し、失礼します! 木神天太です!」
「どこのクラスか言えよ!」
「あ、はい!」
俺はドアを閉め、ノックして開ける。
「失礼します! 木神天太です!」
「……もういい」
何が!?
何がもういいの!?
とりあえず用件言うか。
「あ、安藤先生はいらっしゃいますか?」
「あ、はい」
若い男の先生が立ち上がり、俺の所まで来る。
「えっと……、行事管理部に入部したいんですけど……」
「あ、うん!」
「それで入部届を……」
「あー、わかった。じゃあ入部届、出して」
……はい?
「え?」
「え? いや、出して」
「入部届を……もらいに来たんですけど……」
「それは担任の先生にもらうんだよ?」
え、そうなの?
知らなかったんだけど!
「……じゃあ、先生からもらってきな?」
担任の先生今日学校にいないよ。
どうすんの?
結局、俺は帰るとことにした。
中学校に入学してから数ヶ月くらいの作者も、こうなりました……。