第47話 告白したいこと
「お、来てくれたんだ」
屋上に行ったら、すでに海川柚斗がいた。
それ以外は誰もいない。
「来いって言われたからな」
「じゃ、告白するな」
海川柚斗は俺に歩み寄る。
しかも結構ゆっくり。
「お前、最近名取に変なことされてないだろ」
いや、バリバリされてますけど?
……でも確かに『最近』ではないな。
ってか、なんでこいつが名取のことを……?
ちょっと探ってみるか。
「よく知ってんな。まるで例の電話してきたやつみたいだ」
「例の電話?」
「知ってんだろ? もしかして、お前がその電話のやつか?」
「……よくわかったな」
あ、認めたんだ。
そんなあっさり認めてくれるんだ。
「考えればわかるだろ」
「意外とバカじゃねぇんだな」
「どうも」
海川柚斗はニヤリと笑い、俺の肩に手を乗せる。
「もしかして、告白したいことってこれか?」
「んなわけねぇだろ。もっと大事なことだ」
海川柚斗は俺から離れ、しばらく歩いてからその場で座った。
そしてポケットからタバコの箱を出した。
……なんか見ちゃいけない気がする。
俺は海川柚斗から目をそらす。
……ついでに訊きたいことあるから訊こ。
「それより、お前がプリクラ写真拡散したとはな」
「お前さ、俺の顔見て話せよ」
いや、だってタバコ吸ってるし……。
仕方なく俺は海川柚斗に目を向ける。
そこには何か細いやつを食ってる海川柚斗がいた。
お菓子……?
「タバコを吸ってると思ったか?」
「そりゃ思うだろ」
「校則違反はしねぇぜ? 俺は」
そもそも学校にお菓子って持ってきていいんだっけ?
それ自体が校則違反な気がする。
「で、なんか訊きたいんだろ?」
「ああ、なんでプリクラ写真を公開した?」
「……まさか信じるとはな」
? 何言ってんだ、こいつ。
『まさか信じるとはな』?
「……嘘だったのか?」
「お前はどうだと思う」
「嘘だと思う」
「そうですか。じゃあそう思っとけ」
なんか嫌な言い方。
「俺はな」
突然海川柚斗が言ってくる。
「名取真央が嫌いだ」
そうですか、だから?
何が伝えたい?
「それで一つ頼みたい」
海川柚斗は、手に握っている箱を握りつぶし土下座をする。
「少しの間、俺のバカに付き合ってほしい!」
「…………」
「名取真央は……、いつかお前の心を壊す! だから! お前自身を護るために協力してほしい!」
「…………」
俺がさっきから黙ってるのは理由があった。
頭が話に追いつかない!
そりゃあ急に土下座されたら混乱するよな……。