第45話 寝てたら……
――あったかい。
ヤバイ、めっちゃ気持ちいい。
ここから出たくない。
目覚めた俺。
でもまだ目を開かない。
このまま眠りたい……。
心地よくてあったかくて、しかもめっちゃいいにおいする。
金木犀のにおいだ。
……そういえば俺が最初に咲羅の髪のにおい嗅いだとき、金木犀じゃなくてラベンダー畑のにおいだった気がする。
シャンプー変えたのかな?
これはこれでいいにおいだけど。
ってか、この金木犀のにおい、俺の髪から出てるの?
昨日のこのにおいのシャンプーで髪洗ったし。
それにしてはにおいが近いな……。
じゃあ枕のにおいか?
……いや、違う。
それにしてはサラサラしてる。
……なんか嫌な予感してきた……。
めっちゃあったかいベッド、めっちゃ近くでいいにおい。
俺は目を開けてみる。
目の前にあるのは寝顔。
咲羅の寝顔。
めっちゃ気持ちよさそうに寝てる。
疲れてるんだな、咲羅も――
――って、そんなこと言ってる状況じゃねえな。
これって結構ヤバイことだよな……?
俺、咲羅と寝たってこと?
……そしてなんでだろう。
異様に落ち着いてない? 俺。
寝起きだからかな?
いつもだったら『ええ!? なんで咲羅!?』とか言いそうなんだけど。
ま、どうでもいいか。
さてと、どうするか。
咲羅を今起こして『咲羅、おはよ』って恋愛マンガみたいなシーンをつくるか、こっそりリビングに行って『あ、咲羅、起きたか』みたいになんともなかった感じにやるか。
どうなるか推測してみよう。
前者の場合。
咲羅は『は!? なんで天太!? キモ!』ってなる。
後者の場合。
咲羅は『なんで勝手にリビングにいるの?』ってなる。
……どっちにしろヤバイじゃねぇかよ!
「……ん……んん……」
ん?
今、動いた!?
咲羅が動いた!
どうしよう!
咲羅は目をゆっくりと開ける。
そして俺の顔を見た。
「あ、あの、お、おはようございます……」
何言ってんだ、俺。
先に謝れよ。
「天太……」
咲羅は俺に近づく。
なんで近づく!?
遠下がるところだよね、そこ!
「ちょっ、咲羅……、あの、えっと……」
「? ……。……!」
咲羅が何かに気づき、目を見開く。
そして俺から離れた。
「あ、天太!? なんでここに!?」
「いや、こっちが訊きたいよ! まぁ、お前の家だからあれだけど……」
「え、待って、頭が追いつかない」
俺もだよ。
なんで咲羅がここにいるんだよ。
「え、あ! 思い出した!」
突然咲羅が大声を出す。
……さっきも大声だったけど。
「お、何を思い出した?」
「……天太、朝ご飯、食べよ」
なんで!?
教えてくれないの!?
咲羅は俺に顔を見せないままベッドからおり、部屋から出た。
俺はため息をついて、咲羅のあとを追った。
金木犀のにおいって、個人的には好きなんですよね……。