第42話 咲羅の家で泊まる
「お風呂、先入る?」
8時になると同時に、咲羅が俺に訊いてくる。
しかも、ここは咲羅の家。
そして今、俺たちは二人きりの状況だ。
なんでこうなったんだ――
「ねぇねぇ、ちょっと相談があるんだけど……」
下校途中、咲羅が話しかけてきた。
実璃は部活らしく、今日は二人で下校していた。
「なんだ?」
「今日、親いないんだ」
……で?
「うん、それがどうした?」
「いや、なんていうか……、寂しいってか……」
寂しいのか……?
独りって結構よくない?
なんかうるさいこと言われないし、静かだし。
「だからさ、ちょっと家に来てほしいんだけど……」
いいのか……?
男を家に入れて……。
ま、咲羅がお願いしてるくらいだから、多分いいだろう。
「わかった。1回家に帰って母さんに色々言ってくるから、ちょっと待っててくれるか?」
「うん、ありがとう」
俺たちは俺の家に向かい、俺は家の中に入った。
その間咲羅は外で待っててくれていた。
俺は着替えて、色々荷物持って、母さんに色々言って、外に出た。
「お待たせ」
「うん!」
咲羅は笑いながら俺の前を歩いた。
6時、俺はまだ咲羅の家にいた。
この時間まで話したり、ちょっと勉強したりしてた。
「もう6時か……、咲羅、俺そろそろ帰るな」
「え、なんで?」
『なんで』……?
逆になんで『なんで』って言った?
「親、1日中帰ってこないよ?」
「そ、そうか。頑張れ」
「いやいや、いてくれるんじゃないの?」
こっちが『いやいや』だよ!
なんか思考が合ってない!
「えっとな、咲羅。それは俺に『泊まれ』って言ってるのか……?」
咲羅は黙って頷く。
「あのな、咲羅。俺は男、お前は女。付き合ってもねぇんだし、どっちかの家に泊まるのは――」
「男女差別よくない」
咲羅が俺の声を遮る。
これは男女差別じゃない気がする……。
「でもな、変なことされるかもしれないんだぞ?」
「それなら大丈夫……。天太はそんなことしない」
「わかんないぞ? 俺も男だし」
「別にされても――って、なんで私にそういうこと言わせるの!」
急キレやがった!
なんで!?
「言うの恥ずかしいじゃん!」
じゃあ言うなよ!
結果、咲羅と口論したら『咲羅の家に泊まる』ってなった。
母さんに止めてもらおうと思って電話したのに『アンタも彼女できたのねー! お母さん嬉しい! 頑張ってね!』って言われて切られた。
「で、どうする?」
咲羅が俺の顔を覗くようにして訊く。
俺は何をすればいいんだ……。