第4話 一緒に登校しただけなのに……
「なーにー!?」
教室の中に響くマヌケな声。
友達の総一朗の声だ。
こいつだけは俺をわかっていてくれていて、俺をからかったりしなかった。
つまり、本当の友達。
そして俺は、学校に着いたときに今日の朝のことをこいつに話した。
「お前……咲羅さんと一緒に登校したのか……!」
あのあと、なんか知らないけど一緒に登校した。
でも特に変なことは起こんないで、『今日、暑いね』くらいしか話さなかった。
「あ、ああ……、そうだけど……」
「クソが……。急にかっこつけやがって……」
今日の俺はマスクもサングラスもしてなくて、声も口調も普通だ。
「別にかっこつけてるわけじゃねぇよ……。マスクとかする意味がなくなった――」
「お前な! 咲羅さんがどんだけモテてんのか知ってんのか!? この学校だけで80人に告られたんだぞ! 80人! しかもその中に、学年で1番イケメンだった近藤もいるんだぞ! あの近藤がフラれたんだぞ!」
「……詳しいな……お前……」
「俺は咲羅さんのファンクラブだからな!」
そんなのあるんだ……。
ってか近藤も告ったのかよ……。
確かに近藤の顔は整ってる方だ。
ま、人は見た目だけじゃないもんな。
「……? そういえばお前、近藤が『学年で1番だった』って言ってたけど、今もあいつが1番じゃないのか? 転校生が来たわけじゃねぇし……」
「は?」
総一朗が表情を変えて俺を睨む。
めっちゃ怖い。
「お前が顔と声を公開したせいで近藤が2番になったんだよ……!」
「だから、なんで俺が顔をみんなに見せたら近藤が2番になるんだよ?」
「お前が1番だからだよ!」
ええ……。
なんで……?
総一朗も泣きそうな目だし……。
俺が悪いの?
「……それと、一つだけ言っておく。咲羅さんはツンデレだから、最初は結構酷いことを言ってきたりするぞ」
「ご親切にどうも。なんでそんなこと俺に言うんだよ」
「まぁ、お前なら咲羅さんと付き合ってもおかしくないからな」
「なんでだよ……」
「木神くん! お弁当つくってきたよ!」
昨日の女子生徒が弁当箱を持ちながら俺に近づいてくる。
総一朗は女子生徒が来た瞬間、どっか行った。
「木神くんがどれくらい食べるかわかんなかったから、結構多めにつくってきたよ! 残してもいいからね!」
「ああ……、ありがと……」
うわぁ、マジで食わなきゃいけねぇのか……。
最悪昼飯なくてもいいんだけどな……。
「今日、一緒に食べようね!」
マジで態度変わりすぎだろ……。
めっちゃ最近までお前ら俺のこといじめてたんだよ?
人間の心とかあるのかな?
……さすがにそれは言い過ぎか……。