第36話 日曜当日
「天太ー、アイス買いに行こうよー!」
日曜、午前十時。
部屋で準備してたら、姉ちゃんが俺の部屋に入ってくる。
結構汗かいてる。
急に入ってくるなよ……。
俺は額にある汗を手で拭う。
「あのな、急に入ってくるなよ」
「いいじゃん! 別に見られて困るものなんてないんだから!」
「男子高校生で見られて困るものがないやつなんてほぼいないだろ」
「別にバレてもいいじゃん! 思春期なんだし、そういうのはしょうがないじゃん!」
……何言ってんだ……?
ただ勉強してるところ見られたくないだけなんだけど。
勉強中に他人から見られるのってなんか嫌じゃない?
そんなことを考えてたら、俺のスマホが震える。
咲羅からメールが来ていた。
『着いたよー』
時間ぴったりだな……。
俺は『すぐ行く』と送ってから、用意してある荷物を持つ。
「? どっか行くの?」
「ああ、遊びに行ってくる」
「へー……、あの女の子か……」
姉ちゃんはそんなことを言いながら俺の部屋から出ていく。
あの女の子……?
実璃のことかな……?
それより早く行かなきゃな。
「おはようございます!」
外に出た瞬間、実璃がいつも通り元気よく言う。
……いや、いつも通りか……?
初めて会ったときとか、結構小声だったきがするけど……。
ま、それはいいや。
「おはよ、来てくれてありがとな」
「なんでそこでお礼言うの?」
咲羅が実璃の後ろから現れる。
初めて見たな……咲羅の私服。
「いや、ここまでわざわざ来てくれて――」
「そんなことでお礼なんて言わなくていいですよ……」
「そうそう、優しすぎるんだよ、天太は」
優しいのか……?
俺が優しかったら世界のほぼ全員が優しい人になるぞ……?
「じゃ、行こっか」
咲羅はそう言って、歩き出した。
「――!」
ゲーセンの入口。
その場で立ち止まる俺。
そんな俺を見て止まる咲羅と実璃。
「? どうしたの?」
「音が……」
「音? 音がどうかしましたか?」
「……デカくね? あと人の量も……!」
そう、人の量が多すぎる!
こんな量の人、テレビでしか見たことないぞ!?
音もデカい!
「こんなものですよ、ゲームセンターなんて」
「そ、そうなのか……? ゲーセンなんて行ったことないから――」
「えっ、ゲーセン行ったことないの!?」
そんなに驚く……?
逆にお前らはゲーセンなんて行ったこと――あるか。
俺がおかしいだけなのかな?
「ってことは……これが初めて?」
「ああ……」
「ま、まぁ、行きましょう……」
ゲーセンはいいですよ!