第35話 学校の廊下で
「天太! いつもの場所で食べよ!」
昼休みになった。
廊下に出たら、咲羅が後ろから話しかけてきた。
やっぱり思う、咲羅って本当にツンデレか……?
よし! 試してみよう!
「…………」
「? 天太?」
「…………」
無視しよう!
「ねぇ、天太!」
咲羅は俺の背中を叩く。
でも俺は頑張って無視する。
「ねぇ! 聞こえてるでしょ!」
さっきより強く背中を叩く咲羅。
ちょっと痛い……。
「無視しないでよ!」
咲羅が俺の前に立つ。
俺は咲羅の顔を見て止まった。
怒ってるのかな……?
「あー、悪い咲羅。ちょっと気分じゃなくて」
「気分って……何の?」
「お前の弁当食うって気分」
「え……」
俺の言葉にかたまる咲羅。
「じゃ、そういうことで」
「ちょ、ちょっと待って!」
先に行こうとする俺を、咲羅は腕を掴む。
……あ、俺の腕ね?
「せ、せっかくつくってきたのに!?」
「あー……、総一朗にあげたら喜ぶと思うぜ?」
「違う! 天太のためにつくってきたの!」
この発言は……、ツンデレってことなのかな……?
ってか、最初から『天太のためにつくったから食え』って言えよ……。
「わかった、じゃ、一緒に食おうぜ」
「当たり前じゃん!」
当たり前なんだ……。
それはそれで嬉しいけど。
俺は咲羅と並んで屋上に向かう。
「ちょ、なんでおいていくんですか!?」
後ろからバタバタという音と、実璃の声がする。
振り向くと、弁当箱を持った実璃がいた。
「あー……、悪い。忘れてた」
「忘れてたって……、私の存在ですか……?」
「…………」
「何か喋ってくださいよ!」
実璃も面白いな……。
やっぱり人間って、一部を除いて全員面白いんだな……。
「話したいことがあったのに、教室に行ってもいなかったんですからね!」
「話したいこと……?」
「名取真央についてです」
! 名取……!
「名取真央の、天太さんに近づく理由がわかりました」
「理由……?」
「はい、さっき聞こえたんです。そこで話している内容が」
名取が近づく理由か……。
「で、なんて言ってたの?」
「『木神天太を私のものにすれば、私は完璧になる』って」
「完璧……? どういう意味……?」
考え始める咲羅と実璃。
ってか、そこ考える……?
なんで『完璧』ってワードに反応するの……?
『木神天太を私のものにする』ってところの方に反応しようよ……。
そこが一番怖いんだから。
「『名取真央が具体的に何をしてくるか』ってところだよね」
「どんなことをしてくるんでしょうね……」
そんなことを言いながら、咲羅と実璃が歩き出す。
ちょっと待ってよ……。