表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/258

第32話 屋上で謝罪

 「……来てくれてありがとう……」


 俺は咲羅の顔を見て言う。

 咲羅は俺と目を合わせない。


 ずっと足下を見ている。


 「……具合……もう大丈夫なのか?」

 「うん。それとプリント、天太が持ってきてくれたんだよね? 本当に助かったよ。ありがとう」

 「あ、ああ……」


 ……って、なんで俺がお礼言われてるんだよ……。


 「あの、咲羅。ちょっと言いたいことがあって……」

 「…………」


 黙り込む咲羅。

 ヤバイ……めっちゃ言いにくい……。


 こういう状況、体験したことないからな……。


 「……ごめん」


 俺は頭を下げる。

 咲羅はまだ黙っている。


 ……俺の声、聞こえたかな……?


 俺は顔を少し上げ、咲羅の顔を見る。


 咲羅は目を大きくしていた。

 驚いてる……?


 「えっと……昨日さ、ここで言ったよね? 俺。それで気持ち悪い思いさせて――」

 「ちょっと待って、なんで天太が謝るの?」

 「え、だから気持ち悪い思いさせて……」

 「気持ち悪い思い……? よくわかんないんだけど……」


 ……え?

 どういうこと……?


 ……あ、わかった!

 『気持ち悪い』じゃなくて『怖い』か!


 確かに、いきなり男から『好きだから!』とか言われたら怖いかも!


 「俺、怖かっただろ?」

 「……怖い……? 何が……?」


 どうしよう……話が噛み合わない……。

 ……あんま言いたくなかったけど、言うか。


 「俺さ、昨日ここで言っただろ? 『咲羅のことが好きだ!』って」

 「…………」


 再び黙り込む咲羅。

 この時間が死ぬほど長い……。


 「――全然」


 咲羅がやっと喋る。


 「怖くなかったよ」


 今度はちゃんと咲羅の顔を見る。

 微笑んで、俺を見ていた。


 「むしろ、嬉しかったな。天太にそう思ってもらってて」

 「咲羅……」


 ……。……!

 待って、ヤバイ!


 なんか涙出てくる!

 こんなに優しいこと言われたことなんてないから!


 「ちょ、天太!? 大丈夫!?」


 咲羅がポケットからハンカチを出して俺の目に当てる。

 咲羅……今そんなに優しくしないでくれ……もっと涙出る……。


 「そんなに自虐的にならなくていいよ。天太はすごいんだから」

 「すごい……?」

 「うん。すごいよ」


 『すごい』か……。

 そんなこと初めて言われたな……。


 「――あ! いた!」


 女子生徒の声がする。

 俺は涙を拭い、振り向く。


 いつも俺に付きまとってくる女子生徒たちだ。


 「木神くん! なんでそんなとこいるの!?」


 みんなの手には弁当箱。

 多分俺の分だ。


 「また咲羅と二人きり! ずるい!」


 女子生徒たちは俺に近づき、俺に弁当箱を渡す。

 咲羅はそれを見て微笑んでいる。


 今の俺……幸せなのかな……?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ