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第29話 名取真央の弁当

 「――木神天太さん」


 咲羅が帰ったあと、後ろから名取が声をかけてくる。

 さっきまで驚いた表情してたのに、今はもう笑えてるくらい余裕の表情だ。


 「話があります」

 「……さっきのところな」


 俺は屋上へ行った。

 名取もついてくる。


 「――で、なんだ?」

 「いえ、お弁当、どうしますか?」


 そういえば、名取は弁当箱を持っている。

 マジか……。


 「どうします?」

 「……俺が食わなかったらどうする?」

 「捨てますね」

 「じゃあ食う」


 俺は名取から弁当箱を受け取る。

 名取は満足そうな顔をしたあと、何も言わずに屋上から出ていった。


 俺は何も思わないようにして、弁当を食って、屋上から出ていこうとした。

 階段を降りている途中、総一朗に会った。


 「お前、真央さんにもモテてるみたいだな」

 「最悪だよ」

 「なんでだよ? 咲羅さんよりモテてるのに」

 「アイツの性格、俺には合わない」

 「そっか、じゃあ戻ろうぜ、教室」


 総一朗は俺の隣に来て、並んで階段を降りる。

 しばらくは俺も総一朗も、何も言わなかった。


 「……お前、なんであんなことしてたんだ?」


 総一朗が唐突に喋りだす。

 もう教室の近くだ。


 「あんなこと……?」

 「ああ、顔も声も、全部隠してたじゃねぇかよ。そのせいでいじめられてたんだし」


 咲羅にも同じようなこと訊かれたな……。

 そういえばまだ言ってなかったな、総一朗に。


 「悪いけど、あんま言いたくねぇ」

 「まぁ、無理して言えってわけじゃねぇし……。でも、困ったら相談するんだぞ? 俺に言えないことは咲羅さんや鶴崎に、咲羅さんや鶴崎に言えないことは俺に言えよ?」

 「サンキュ、いつか相談すると思う」


 総一朗の顔を見ないで俺は会話を続けた。

 なんか顔を上げられない。


 ……って、いつまで落ち込んでんだよ……俺……。

 実璃にアイスまで買ってもらって『元気出して』って言われたし、総一朗にまで心配されてるし……。


 もともと嫌われ者だったんだから、咲羅に嫌われたくらいで……。


 ……なんでだろう……。

 咲羅には『嫌われたくない』って思ってる……。


 なんでこんなこと思ってるんだ……?


 嫌われてもなんも変わらないはずだ。

 それなのに……。

意外と優しい総一朗……。

それと、この作品全体に、咲羅や実璃たちに弁当箱を返している描写がありませんが、裏でちゃんと返してます。

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