第27話 嫌われた?
「サク……ラ……」
俺は咲羅の顔を見つめる。
咲羅は俺と名取を交互に見ている。
かなり驚いているみたいだ。
「天太……」
咲羅は口をパクパクと動かす。
ここで俺はやっと自分の放った言葉の意味がわかった。
『咲羅が好き』、そう言っていた。
「咲羅……、これは……」
俺が咲羅に近寄ろうとすると、咲羅はその場から走っていった。
……嫌われた……?
唯一わかってくれる人に……?
……唯一じゃないか。
いやいや、そんなとこにツッコんでる場合じゃない。
確かに、なんで俺あんなこと言ったんだ……?
本気で咲羅のこと好きって思ってるのか……?
そんなこと……思ってない……。
「……ハハ……ハハハハ!」
突然名取が笑い出す。
「嫌われましたね! アナタの味方だった白糸さんに! そりゃそうですよね! 突然、男から『好きだ』なんて言われたら! 気持ち悪いと思いますよね! あーあ! かわいそうですね! もうアナタの味方はいませんよ! いずれ鶴崎さんも――」
「テメェは黙ってろ!」
名取の声を遮って俺は叫ぶ。
それで名取は黙った。
俺はこの場にこれ以上いたくなかったから、教室まで戻ることにした。
「あ、天太さん!」
教室に戻る途中、実璃が話しかけてくる。
こいつは元気そうだな……。
「? 元気なさそうですね。どうしたんですか?」
「まぁ、ちょっと……な……」
「……ちょっと来てください」
実璃が俺の手を引いて、走り出す。
「はい、どうぞ!」
実璃が俺にアイスキャンディーを向ける。
「ラムネ味で、とても美味しいんですよ! 安いし、私の一番のオススメです!」
「えーっと……実璃……? どういうことだ……?」
「食べてみてください! 元気出ますよ!」
実璃がグイグイ来るから、俺は仕方なく受け取る。
すると実璃が目を輝かせる。
食うしかないか……。
俺は袋を開けて、中からアイスキャンディーを出す。
そして一口食べた。
……冷た……。
アイスなんて久しぶりに食ったな……。
でも美味い。
いや、めっちゃ美味い。
「どうですか? 美味しいですか?」
「ああ、美味い」
「よかった……」
実璃は微笑んで、俺の耳元に口を近づける。
「困ったときは、いつでも相談してね」
!
待て待て!
耳元でそれはさすがにヤバい!
一応男だぞ、俺!
耳元でそんなカワボ出すな!
「もう一つ食べる?」
実璃が俺の耳から離れる。
そして目の前にあるコンビニを指で差す。
ちなみに今俺が食ってるアイスは、そこで実璃が買ってくれた。
「いや、いい……」
「本当? 遠慮しなくていいんだよ?」
「本当に大丈夫だ。ありがとな」
「うん!」
……今気づいた。
実璃の口調が変わってる……。
ちょうどタイミング悪いところに咲羅、いるな……。
あと実璃、かわいい……。