第268話 質問攻め
新しい担任の挨拶も、夢の世界へ誘う能力を持っている校長の話も終わって、今日はもう解散になった。
帰りもちゃんとみんなに質問攻めされてる。
何回も『言うことなんてありません』って言ってるのに、なかなか離れてくれない。
しかもさっきからポケットに入れてるスマホがずっと震えてるから、脚が麻痺した感じがする。
誰かがずっと俺にメールを送ってきてるんだ。
こんなにメール連射するなんて総一郎しか考えられない。
確認したいけど、ここでスマホ見たらなんか嫌な予感がするからやめておこう。
「あのー……俺そろそろ帰りたいんだけど……」
「嘘だー! 二人で寄り道する気だ!」
はい、どっかに行きます。
俺が10分咲羅を待たせたから一緒に行くことになりました。
でもそんなこと言えない。
言ったらなにされるかわからないし。
「お前ら、ずっと付きまとってたら二人に迷惑だぞ?」
どっかから聞こえる、懐かしい声。
そこを見ると、なんと柚斗が。
こいつ、久しぶりに見た気がする。
「お前ら、どうせ恋人いないんだろ? なんでいないと思う? そうやって他人を困らせるから誰も好きになってこないんだよ」
うわー、辛辣……。
その言葉、響く人には結構響くぞ?
「はぁ? 海川は黙ってろよ! 別に俺、恋人とかは……ノーコメントだし!」
意味わかりません、その答え。
「じゃあ恋人いるのか?」
「まだ誰も俺の魅力に気づいてないだけだ!」
ありゃりゃ。
これからあなたの魅力に気づいてくれる人が現れてくれるといいですね。
「とにかく、帰らせてやれ。できたてホヤホヤのカップルを邪魔したいのか?」
その言い方やめてよ。
『こんな説明じゃ誰も離れてくれるわけないだろ』って思ってたけど、案外みんな離れてくれた。
柚斗のおかげだ。
柚斗にお礼を言いたかったけど、柚斗もどっか行っちゃったからあとでメールで送るとしよう。
それより、さっきからメール送ってきてるの誰だ?
みんながいなくなったから、やっとスマホを確認できる。
言音から131件も通知が……。
内容が全部『おめでとうごさまいます!』だし。
「天太、行こ」
咲羅は荷物を持って教室から出ていく。
咲羅もお疲れのようだ。
そういえば、総一郎とか実璃、柚斗や湊亜、全員同じクラスだったな……。
楽しくなりそうだな……。
そう思ってクラスを見渡したけど、咲羅を待たせたくなかったから俺も廊下に出た。




