第263話 夜の学校へ 〜4〜
とりあえず職員室の前まで来た。
まさかもう一度ここに来るとは思わなかった。
ここには嫌な思い出しかないし。
怒られたんだよね、何回も。
『職員室への入り方が違う!』って知らない先生から。
先にノックするんだっけ?
で、『失礼します』で……。
……もう面倒くさくなってきた。
社会の常識だと思うけど、もう職員室には使わないな。
「屋上の鍵って何番扉の近くにあるかな?」
「とりあえず全部見るしかないな。……もしかしてだけど、これって俺が先に行くやつ?」
「行ってくれるんじゃないの?」
「わかりましたよ」
とりあえず中に入らなきゃいけない。
ドアを3回ノックしてから開ける。
「失礼します。高校2年――じゃなくてもう3年か。いや、まだ始業式始まってないから2年のままか……。でも終業式終わったもんなー……。しかももう4月だし。えーっと……高校2.5年っていうのかな? まぁ、高校2.5年の――」
「――ハハ――……」
え、なに!?
後ろから笑ってる女の声が!
怖い! 怖すぎますって!
ってか、幽霊さん! 職員室の前で出ないでよ!
トラウマある場所でトラウマを植え付けないで!
出るならトイレとかでしょ!
どんな幽霊なのかわからない状態が一番怖いから、振り向いてその正体を確認しようとする。
後ろを見てみるけど、幽霊っぽいものはいなかった。
けど、咲羅が震えてる。
まさか、咲羅が取り憑かれた!
「咲羅! 大丈夫!?」
「……アハハ……」
……? 笑ってる……?
かわいそうに、笑いの幽霊に取り憑かれてずっと笑うことになっちゃったのか。
「いや、天太……! 誰もいないのに……そんなの言わなくていいって……! ってか、2.5年って……!」
……あ、俺を笑ってたの?
え、恥ずかし。
「……ハハ……アハハハ……!」
「ちょっ、笑いすぎじゃない!? 俺なんも悪いことしてないよ!」
「う、うん……! そうだね……! なんも悪いことじゃないね……!」
じゃあなんで笑ってる!?
マジで恥ずかしいんですけど!
「……でもありがと」
目に溜まってる涙を指で拭きながら、咲羅は言う。
こいつ、笑いすぎて泣いてたのか……。
「全然怖くなくなった」
「……そ、そう?」
「うん。これだからライバル――……他の女子からもモテモテなんだね」
……どういう意味?
ま、いつか。
とりあえず屋上の鍵をさがそう。
お化けさん、出ませんように。
出たとしてもなんも危害加えないでください。




