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第26話 名取真央の弁当

 「木神天太さん」


 ……また聞こえたよ……聞きたくない声が……。

 俺は振り向く。


 めっちゃ笑顔の名取がいた。

 手には弁当箱がある。


 「こちら、木神天太さんの分です。よかったら食べてください」

 「悪いけど、俺には少なくとも3つの弁当があるんだ。それ以上は食えない」

 「あれ? 昨日は9人分食べてましたよね? 4人分くらい余裕なのでは?」

 「あれは無理して食ったんだ。無理はしたくない」


 俺は名取を無視して、教室に向かう。

 ってかまだ朝だぞ……?


 せめて昼に渡せよ。

 荷物増やすな。


 「そうですか……いらないですか……」


 名取は俺についてくる。

 そして俺の耳元で(ささや)いた。


 「でしたら、()を広めますよ?」


 噂……?

 俺の噂か……?


 特に思い当たることはないな……。


 「その噂のせいで、白糸さんや鶴崎さんが苦しんでも知りませんからね」


 咲羅……?

 何が関係あるんだ……?


 「おい、それどういう意味――」


 振り向くと、名取はもう俺に背を向けて歩いていた。

 俺は急いで名取を追い、名取の手を掴む。


 すると名取は(わら)って俺を見る。


 「どうしたんですか?」

 「……なんで咲羅に関係するんだ……!」

 「それは屋上で話しましょうよ」


 名取はそう言って俺の手を放す。

 そして何もなかったかのように歩き始める。


 俺は名取についていった。







 「――ここにしましょう」


 名取は屋上の真ん中辺りで止まる。

 そして俺に顔を向けないまま喋りだした。


 「先程の質問、答えさせていただきますね」

 「ああ、時間がない。早くしろ」

 「アナタ、咲羅さんに()()()()しましたよね?」

 「……は?」


 変なこと……?


 俺は今までの行動を振り返る。

 でも特に思い当たるようなことはない。


 「とぼけるつもりですか?」

 「……心当たりねぇ……」

 「そうですか。証拠もあるんですけどね」


 証拠……?


 ここでやっと名取が俺と目を合わせる。


 「高校生であのような行為……。妊娠したらどうしてたんですか?」


 妊娠……?


 ! そんな行為してねぇぞ!


 「俺はそんなのしてねぇ!」

 「なんでとぼけるんですか? アナタがそのような行動をとると、大好きな白糸さんが悲しみますよ?」

 「好きだからこそそんな行為しねぇんだよ!」


 俺は名取の腕を強く握る。

 名取は目を大きくさせている。


 「い、今なんと……! アナタ……白糸さんのことが……!」

 「ああ! 好きだ! だからそんな行為しねぇって言ってんだよ!」


 俺は力を強くする。


 名取はさっきよりも目を大きくする。

 『俺を見て』ではない。


 『俺の後ろを見て』だった。


 俺は振り向くと、そこには咲羅がいた。

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