第252話 写真を撮ろう 〜2〜
とりあえず近くのところを歩いてみた。
あるのは知らない小さい花と雑草。
これ、俺負ける気しかしない。
俺一人の力じゃ無理か……。
……うん、ルールに『一人で挑戦しろ』なんて言われなかった。
セコいと思うけど、誰かを頼るか。
メールで総一郎に送るけど、既読すらつかない。
いつもは一瞬でつくのに。
そういえば総一郎と湊亜は合宿だったんだっけ?
じゃああの二人は無理か。
残るは実璃と柚斗だ。
あの二人か……。
とりあえず二人にメールを送ったけど、既読がつかない。
今二人に頼るのは無理そうだ。
つまり、俺一人の力でやるしかない。
でもそれじゃ無理なんだ。
いや、負けるのは別にいいよ?
でも撮った写真がみんなよりあまりにもレベルが違いすぎたら恥ずかしいじゃん。
……しょうがない、最終手段だ。
知らない人を頼ろう!
まぁ? 俺ももうコミュ障はだいぶ改善されたんだ。
実璃を見てみろ。
あいつなんて昔は心配するレベルのコミュ障だったけど、今はなんともないじゃん。
だから俺も成長したはずだ。
成長した木神天太をなめるなよ?
お、早速人が歩いてるじゃないか。
20代っぽい男の人。
優しそうだから大丈夫だ!
俺はそこまで急いで歩いた――
――? あれ? 脚が動かない。
……! 脳では『なんも怖くないよ』って言ってるけど、身体は『やめろ! あんなリアルの人間と話せるわけがない!』って言ってる!
動けないうちに、男の人はどんどん歩いていく。
ちょっ、待ってよ! 身体が動かないんだって!
……で、結局男の人はそのまま行ってしまった。
どうやら俺には無理みたいだ。
知らない人に話しかけるのが。
……! そうだ、他のみんなが花見してる場所に行こう!
言音はさっき『この街には花見できる場所いっぱいある』って言ってた気がするから、この街歩いてればどっかに花見スポットがあるはず!
そこの花は綺麗なはずだから、そこで写真撮ればいいじゃん!
そして、なんでこれにすぐ気づかなかったんだろう……。
よし、とりあえず花見ができそうな場所に行ってみるか。
自分の住んでる街だからわかるはず。
よし、まずはどの方向に行こう……。
……そもそもこの街に花見できそうな場所あったっけ?
ヤバい、自分の街なのに地図がわからない。
インドアだから全然外でないもんな……。
もう終わりじゃん!
為す術がないって!
「ミャー!」
下からそんな鳴き声が聞こえる。
そこを見ると、ミミがいた。
かわいい……。
「ミミー! 助けてよー! 俺負け確定だって!」
「ミャー! ミャ、ミャ!」
ミミは俺の靴を舐めたあと、そのまま歩いていく。
しかも、ときどき振り向きながら。
これは……『ついてこい』って言ってる?
ミミ……! お前……!
やっぱ大好きだわ、ミミのこと。