第251話 写真を撮ろう 〜1〜
「今、花ないだろ?」
父さんは上を指差しながら言う。
「こんな残念な花見が他にあるか?」
あなたのせいで花なし花見になってるんですよ。
「だから、せめて花の写真でも見ようじゃないか! 全員、どっかで花の写真を撮ってくるんだ。それで、一番綺麗だった人が優勝! 景品は超スペシャルなものだ!」
へー……。
うん、ごめん、感想これだけ。
綺麗な花の写真を撮ってくればいいだけだよね?
「制限時間は1時間な。もちろん、俺たちも参加するからな! それじゃ、よーいドン!」
急に始めるな。
でもなんか始めなきゃいけない雰囲気だから、やろっかな?
母さんは千鳥足でどっかに向かった。
父さんはその場から動いてない。
ミミは気づいたらいなかった。
咲羅たちは急なことに、なにをすればいいかわからないみたい。
「あー……。みんな、やりたくなかったらやらなくていいよ」
「ひどい! せっかくこのお父様が考えたのに! 泣いちゃうぞ!」
「……みんな、行こ」
姉ちゃんは立ち上がる。
……姉ちゃん、マジか……。
姉ちゃんが立ち上がったから咲羅たちも立ち上がる。
父さんはさっきから『ぴえん! 悲しい!』とか言っててうるさいから、俺も行くか。
姉ちゃんはきっと、父さんと離れたいだけなんだな。
とりあえずみんなで近くの神社に言った。
ここは植物があるな……花はあんまりないけど。
「みんな、なんかごめんね。嫌だったら参加しなくていいよ?」
「いや、私、景品ほしいです! 木神先輩のお父さんの景品ですよ!」
「どうせ大したもんじゃないからあんまり気合入れないほうがいいぞ」
「でもほしいです! ってわけで、先に行きますね!」
ものすごいスピードで走っていく言音。
あいつ、マジか……。
「それじゃあ、僕も……」
翔琉もどっかに歩いていった。
なんで? そんな景品ほしい?
「あの……、なんか……私も参加させていただきます……」
とうとう咲羅も参加しちゃったよ。
ま、この空気じゃ参加せざるを得ないよな。
だったら俺もやらなきゃじゃん。
写真撮るセンスなんてないよ、俺。
「……天太、どうやら私たち、やらなきゃいけないみたいだね」
「……しょうがない、我慢するか」
というわで、みんな参加になってしまった。
ルールはシンプルだけど、いざ綺麗な写真を撮るとなると、難しいものだね。
そもそもどの花がいいかも決めなきゃだし。
そういうの感じるの、苦手なのに……。