第250話 綺麗な花……?
「――おまたせしました! 綺麗は花、持ってきました!」
走ってきたらしく、肩で生きをしてる言音がこっちに来た。
でも言音、手ぶら?
「えっと……花は?」
「もうすぐ来ます!」
来る?
花って歩くの?
父さんたちのほうを見てみる。
まだ踊ってる。
本当にどうするべきなんだ……。
「――で、私がすることって?」
? え?
ちょっと待って、なんでこの声が聞こえるの?
あいつは呼んでないはず……。
不思議に思ってその声の正体を確認してみると、予想通り咲羅。
「木神先輩……呼んできましたよ……!」
「ちょっ、なんで咲羅!?」
「いや、私呼ばれたから来たんだけど」
「……言音……まさか……」
「はい! 白糸先輩のお名前、『サクラ』ですよね!」
マジか!
こいつ大丈夫?
確かに綺麗な花……じゃなくて人だけど!
「咲羅、今すぐ帰れ」
「え? 呼ばれたからわざわざ準備して来たのに?」
「お前、まだ死にたくないだろ?」
俺は向こうにいる父さんたちを指差す。
すると咲羅はその存在に気づいたらしく、『うげ』って言ってる。
「なんで私、呼んだの?」
「俺じゃねぇよ……」
「いや天太でしょ。言音がそう言ってた」
なんでだよ。
俺が悪者みたいになってんじゃん。
「まさか、そのまま帰れって言うの? 私めっちゃ準備してきたんだけど!?」
「ごめん……本当に……」
「……花見、してるんでしょ? だったらみんなでやろうよ」
んー、咲羅?
お前なに言ってるの?
「私もせっかく来ちゃったんだし、なんかしないと損じゃん」
「どうなっても知らないぞ……?」
「自分の身は自分で守るから」
その言葉に翔琉と言音は同時にうなずく。
まるで戦場に向かう感じだけど、それと比べたら全然危険じゃないんだけどね。
「……じゃあ行くぞ」
父さんたちのところに戻る。
「ん? おー、咲羅ちゃんじゃん! 覚えてるよ!」
覚えてるんだ、そこは。
「父さん、咲羅も参加、オッケー?」
「もちろん! さ、なんか食べなさい。それと、いっぱい飲みなさい、お酒!」
「それ犯罪だぞ……?」
遠慮がちに座る咲羅に缶ビールを勧めている父さんは姉ちゃんが近くにいるから心配する必要はなくて、翔琉と言音は俺が守らなきゃ。
母さんも危険人物になっちゃったからな。
「そうだ、みんなでゲームをしよう! 俺が考えたんだ! なかなか面白いぞ!」
花見しに来てゲームするな――って思ったけど、見る花もないからやるか、ゲーム。
父さんが考えたってところがちょっと怖いけど、きっと大丈夫だろ。