第244話 酔いが覚めるまで待とう
とりあえず父さんが酔いから覚めるまで待とう。
俺は自分の部屋で過ごすことに決めた。
飲み物とかはどうしよう……。
きっと姉ちゃんが自分の部屋にストックしてるはずだから、あとで借りに行くか。
とりあえずメールでそのことだけ送っとくか。
『姉ちゃん、危険人物がリビングにいて飲み物取りに行けない。姉ちゃんのとこに飲み物ある? あったら取りに行っていい?』
それだけ送ってスマホをスリープ状態にした。
そのとき、誰かからメールが来た。
……翔琉……?
『木神先輩、話したいことがあります。……というか、遊びに来ちゃいました』
話したいことか……。
それに、『遊びに来ちゃいました』って。
かわいいとこあるな、あいつ。
……? ん? 遊びに『来ちゃいました』……?
『来る』って……『come』ってこと……?
「おー、誰だーい? まさか、俺のかわいいかわいい天太ちゅわんのお友達?」
父さんの声がめっちゃ小さいけど聞こえる。
ヤバい! 翔琉と父さんを会わせちゃダメだ!
俺は急いで部屋から出て、玄関に向かう。
父さんはドアを少しだけ開けて、外にいる誰かと話してる。
間違いない、翔琉だ。
「うわああぁぁ! 父さん! もういいから!」
「なんでよー! 俺に会わせられないいやらしい友達でもいるのかー?」
「ちょっ、本当にやめて! マジで俺学校での居場所なくなるから!」
「『イケメンなお父さん』って有名になって、みんなが天太のいるところに来るからスペースがなくなるってこと?」
「違う! もういい! ちょっ、姉ちゃん! 助けて!」
叫ぶけどもちろん来てくれない。
「翔琉! えっと……カフェ行こっか! ほら、近くにあるじゃん! そこ! 俺もすぐ行くから先行っててくれる?」
「は、はい……」
翔琉は気まずそうに歩いていく。
「あー、俺の天太ちゅわんのお友達ー! 待ってー!」
「翔琉! これは無視して!」
翔琉はときどき振り向きながらも歩いていった。
その後俺はすぐに父さんを説得して、カフェに向かった。
父さんは『ごめんな……天太ちゅわん……。俺……天太ちゅわんの気持ちわかってなかった……!』って泣きながら謝ってくれた。
……親を泣かせちゃったけど、これ俺のせいかな?
カフェに行くとすでに翔琉が座ってくれてた。
俺はこっちに向かってくる店員さんを手で制しながらそこまで向かう。
「ごめん、お待たせ」
「あの……僕、なんか邪魔しちゃいましたかね……?」
「いや、むしろ助かった。ずっとあの環境にいるの疲れる」
「お父様ですか……?」
「お父様です」
「面白いお父様ですね……」
「本当に疲れる」
そのときちょうど店員さんが俺のメニューを訊きにきたから俺はホットコーヒーを頼んだ。
翔琉もホットコーヒーを頼んでる。
……ってか、ここのカフェ、勝手に注文訊きに来てくれるんだ。
ボタン押すタイプじゃなくて。
「で、話したいことって?」
「その……あんまりたいしたことじゃないんですけど……」
翔琉はリュックサックから大量の紙を出せす。
原稿用紙……?
「感想文、一緒に考えましょう」
「あ……」
存在忘れてた……。