第242話 翔琉と仲良くなろう作戦 〜終〜
どうしよう、帰りが遅くなっちゃった。
翔琉と歩きながら話してただけなのに、気づいたら何時間も経ってた。
家に帰るのが怖い。
でも仕方ない。
怒られてもミミに慰めてもらおう。
俺は覚悟を決めてドアを開ける。
目の前にいたのは姉ちゃんだった。
「……あ、姉ちゃん……ただいま……」
「今何時?」
うわー……このタイプか……。
「……7時くらい?」
「10時」
あらー、そんな経ってたの?
翔琉と話すの楽しすぎて時間経つの忘れてたよ。
「『遅くなるんならメールちょうだい』って前言わなかったっけ?」
「……確か……おっしゃってましたね……」
「メールもないじゃん」
スマホとかメールの存在も忘れてたんですよ。
「ねぇ、私ずっと心配して待ってたんだけど」
「はい……」
「どうするの? もし天太が事故とか事件に巻き込まれちゃって帰れないとき、私が『またどうせただ遅れてくるだけでしょ』って思ったら。私、天太のことさがさないんだよ?」
「はい……」
「そのせいで天太、死んじゃったりするかもしれないんだよ?」
……俺のために怒ってくれてる……。
そのことはわかってるんだけど、姉ちゃんの怒り方怖い。
怒鳴るんじゃなくて静かに怒ってる。
「わかった? 次から遅くなるようだったらちゃんと連絡してね?」
「……はい」
「じゃあもういいよ。……で、今日はなんでこんな遅かったの? 事故とか遭ってないよね?」
いつも通りの姉ちゃんに戻った。
いや、いつもより心配してくれてる気がする。
「大丈夫、ちょっと話してたら時間経つの忘れてただけ」
「ご飯食べたの?」
「いや、冷たいシェイクしか飲んでない」
「つまり、なんも食べてないってこと? 夕飯、用意してないけど……。簡単なものだったらすぐつくれるよ?」
あー、夕飯か……。
帰るの遅くなった上に夕飯をくれなんて図々しいすぎるな。
今日はやめとくか。
一食くらい抜いても死なない、今の俺なら。
「いいよ、あんまりお腹空いてないし」
「でもなんか食べなきゃ身体に悪いよ?」
「大丈夫、疲れたから寝る」
俺はすぐに自分の部屋に向かう。
どうやって中に入ったかはわからないけど、部屋の中央にミミがいた。
ネコってドア、開けられるんだね。
「ミミー、久しぶりー」
ミミの近くまで行って、抱く。
ミミ、あったかいな……。
「ミャー、ミャー」
「どうした?」
「ミャー……」
ミミは俺の口の周りのにおいをクンクン嗅いでる。
……帰りに飲んだシェイクのにおい、まだ残ってたんだ……。