第241話 翔琉と仲良くなろう作戦 〜5〜
※会話文ちょっと長いです。
「翔琉、それは『本当の自分』を表現してないってことだよな?」
翔琉は俺と目を合わせないままうなずく。
「だったら俺は、『本当の自分』を表現してもいいと思うぞ? 裏切られたのって……中学生までのことだろ? だったら大丈夫だ。もう誰も裏切らない。高校生にもなってそんなことするやつ、いないよ」
「それでも……怖いんです……。もし……否定されたらって思うと……」
「だったらそいつらは敵にすればいいじゃないか」
今度は翔琉は驚いたみたいで、俺の目を見た。
「自分を表現したらそれを嫌って敵になる人は確かに出てくる。だけど、逆に自分を表現したらそれを好きになって仲間になる人もいる。その人たちがいれば、お前なら大丈夫だと思うぞ?」
また俺から目をそらす翔琉。
やっぱりまだ納得できてないみたいだ。
「俺だって嫌われまくってたんだぜ? 知ってるだろ? 今は咲羅とか実璃とかいっぱいいるけど、あのときはあんまりいなかったんだ。それでも俺は今も元気だ。それは唯一の仲間がいたからだ。総一郎っていうんだけど、なかなか面白いやつでな。そいつのおかげで俺はなんとかなってた。ただ一人だけでも支えになるんだよ。ま、その人との相性とかもあるけどさ。少なくとも翔琉、お前には二人……いや、3人いるな」
「3人……?」
「俺と野尻先輩……は、まぁいちおうカウントしとくってとこ。それから言音だ」
今度も翔琉は驚いたみたいで、目は合わせなかったけど、目が大きくなったことはわかった。
「あいつ、お前のこと好きだと思うぞ? 恋愛的な意味じゃないけど」
「……あいつは誰に対してもああいう態度ですよ」
「そんなことないと思うぞ? 確かに表面上はみんな同じに見えても、翔琉に対する仕草とか――まぁ、『中身』っていうのかな? それはお前は特別だと思うぞ?」
「…………」
「大丈夫、俺は少なくともお前が好きだから。それに、今ので他の人よりかはお前のこと理解できたと思うし」
「……理解……ですか……」
翔琉は立ち上がる。
だけど今でも俺と目を合わせてくれない。
それは敢えてそうしてるんだと思う。
「木神先輩、伝えたいことがあります」
「なんだ?」
俺も立ち上がる。
そしたらやっと翔琉は俺と目を合わせてくれた。
「今日は、ありがとうございました」
満面の笑みを浮かべて翔琉はそう言う。
こいつの笑顔、初めて見た気がする。
「……よし、じゃあ行くか!」
「行くって……どこにですか?」
「こっから遊ぶんだよ、せっかくお前と距離縮んだんだから。この時間だからな……カラオケ……は嫌だな。ああいう雰囲気苦手だし。……じゃあ散歩しよ? それしながら話したいし。1年生のこと、よく聞きたいんだ。俺、その学年のことあんまり詳しくないから……」
「……わかりました、行きましょう」
翔琉が歩き出したから、俺もそれに倣った。
やっぱり面白いやつらばっかだな、俺の周りのやつら。