第238話 翔琉と仲良くなろう作戦 〜2〜
翔琉と駅前まで来た。
陽キャが多いな……。
翔琉は黙って歩いてるから、どこに行くかも教えてくれない。
そろそろ息が苦しくなってきた、陽キャ多くて。
「――ここ」
翔琉がやっと止まる。
……カフェ?
いや、コーヒーとかは売ってなさそう。
看板には、陽キャが写真撮りそうな飲み物の写真があった。
キャラメルシェイクみたいなやつの上にホイップ乗ってるやつとか、マンゴースムージーとか。
もちろん、店の中にはたくさんの高校生が……。
みんな楽しそうに大声で話してる。
「え、ここ?」
「ここ」
「……マジで言ってる?」
「マジで言ってる」
「本当に中に入るの? 怖いんだけど」
「さっき言ったろ? 『恐怖に歪む顔が楽しみ』だって」
え、こわ。
お化け屋敷より怖いぞ、これ。
どうしよう、帰ろうかな?
「逃さないよ」
怖いって、翔琉。
翔琉は俺の制服を掴んで中に入る。
暖房がすごくきいてる。
席はまぁまぁ空いてるから、先にとらなくても大丈夫っぽい。
翔琉は迷いのない足取りで歩いてる。
「君から先に注文どうぞ?」
無理。
そもそも商品名が言えない。
さっきチラって見たけど、『ハングリークマちゃんのスペシャル木ノ実&ハチミツシェイク』って書いてあったぞ。
最初のハングリーなんとかってところ絶対いらないだろ。
「ずっと突っ立ってると変に思われるぞ? さっさと注文してきたら?」
確かにそうだけど!
言うの恥ずかしい!
だけど翔琉に押されたから、俺は注文カウンターのところまで行った。
店員さんも陽キャっぽい……。
「ご注文をどうぞ」
店員さんの笑顔、眩しい……。
なるべく恥ずかしくないメニュー名のやつを頼もう。
……待って、商品一覧とかないじゃん。
普通あるよね? 注文するところに置いてあるよね? 紙とか。
なんでないの?
さっきのクマちゃんのやつしかわかんないんだけど。
仕方ない、頑張ってそれ言うか。
「えっと……」
ヤバい、言うのが本当に恥ずかしい。
二度とこういうところは行かない、そうしよう。
「は、ハングリークマちゃんの……スペシャル木ノ実……&……ハチミツシェイクを……」
「サイズはどうしますか?」
「えっと……オススメで……」
「ではMサイズにさせていただきます。ご注文確認お願いします。木ノ実とハチミツのシェイクがお一つでよろしいでしょうか」
あなたが略さないでくださいよ、あの長い商品名を。
木ノ実とハチミツのシェイクで通じるなら最初からその名前にしてくださいよ。
とりあえずお金も払って、それを受け取った。
カラフルだ……。
先に席に座って待ってたら、翔琉もすぐに来た。
コップを持ってる。
「なに頼んだの?」
「ホットコーヒー」
ホットコーヒーあるじゃねぇか!
俺、恥ずかしい思いする必要なかったじゃん!
しかも、甘いもの飲むためにここに来たのに、ホットコーヒー頼むな!
俺だってこのクソ寒いときにこんな冷たいシェイク飲みたくなかったわ!